ソルウェイ・モスの戦い

ソルウェイ・モスの戦い

1542年11月24日、イングランドとスコットランドの国境付近、ソルウェイ・モスで繰り広げられた戦いです。この戦いは、イングランド王ヘンリー8世とスコットランド王ジェームズ5世の間の宗教的な対立が背景にありました。

背景

ヘンリー8世は、カトリック教会からの離脱をジェームズ5世に要求しましたが、ジェームズ5世はこれを拒否し、さらにヘンリー8世との会談も拒否しました。これに激怒したヘンリー8世はスコットランドへの侵攻を開始し、ジェームズ5世は報復として軍を招集しました。

戦闘の経過

スコットランド軍は1万5千から1万8千の兵力を擁してイングランドに侵攻しましたが、指揮系統が混乱していました。マクスウェル卿が攻撃を主導すると宣言したものの、オリバー・シンクレアが指揮官を自称するなど、現場は混乱を極めました。

一方、イングランド軍はウォートン卿率いる3千人で、ソルウェイ・モスの近くでスコットランド軍と遭遇しました。統率の取れていないスコットランド軍は、イングランド軍の攻撃により総崩れとなりました。オークショーヒルで騎兵に追われ、アーサレットの丘に逃げ込んだものの、エスク川と泥沼に挟まれ、逃げ場を失いました。必死の反撃もむなしく、スコットランド軍は降伏を余儀なくされました。記録によると、戦闘というよりは、スコットランド軍を川と泥沼に追い込むだけの戦いだったとされています。混乱の中、多くのスコットランド兵が川や泥沼で溺死しました。

戦場から離れた場所にいたジェームズ5世は、この敗戦の報せを聞き、熱病にうなされながらフォークランド宮殿に撤退しました。王妃が息子ではなく娘を産んだことで、彼は生きる気力を失い、その2週間後に亡くなりました。

戦後

戦闘での死者はイングランド側が7人、スコットランド側が20人と比較的少なかったものの、1200人ものスコットランド兵が捕虜となりました。捕虜の中には、オリバー・シンクレア、カセルス伯爵、グレンカーン伯爵、マクスウェル卿といった多くの貴族が含まれていました。彼らはイングランドに連行され、捕虜として扱われましたが、後に身代金を支払うことで釈放されました。捕虜の待遇が良かったのは、彼らを味方に引き入れようとするイングランド側の思惑があったためです。

歴史家の中には、この戦いをヘンリー8世の強引な求愛の始まりではなく、ジェームズ5世の戦争政策の頂点と捉える人もいます。スコットランド貴族が多数捕虜になったにもかかわらず、この戦いはヘンリー8世の政策や、スコットランドによるグリニッジ条約の拒否に大きな影響を与えなかったとされています。

記念

戦場跡は、イングリッシュ・ヘリテッジに登録されており、歴史的な価値が認められています。

ソルウェイ・モスの戦いは、指揮系統の混乱、不十分な準備、そして戦略の欠如が敗北につながることを示した戦いであり、スコットランドの歴史に大きな影響を与えました。

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