ソロービル

ソロー・ビル

ソロー・ビル (Solow Building) は、アメリカ合衆国ニューヨーク市マンハッタンのミッドタウンに位置する、地上50階建て、高さ210メートルの印象的な超高層建築物です。西57丁目9号に建ち、特に5番街のすぐ西、57丁目と58丁目の間に位置しており、すぐ隣には高級百貨店のバーグドルフ・グッドマンや名門ホテルであるプラザホテルがあります。

建築とその特徴

このビルは、世界的に著名な建築設計事務所であるスキッドモア・オーウィングズ・アンド・メリル (Skidmore, Owings & Merrill) に所属していた建築家、ゴードン・バンシャフトによって設計され、1974年に竣工しました。バンシャフトは、数々の著名なモダニズム建築を手がけた人物として知られています。

ソロー・ビルの最も視覚的に際立つ特徴は、その独特なファサードデザインにあります。北側（58丁目側）と南側（57丁目側）の壁面は、垂直方向に緩やかな凹形のカーブを描いています。この波打つような壁面は、見る者に強い印象を与え、マンハッタンのスカイラインの中でも個性的な存在感を放っています。この特徴的な湾曲デザインは、同じくバンシャフトが設計した42丁目のW・R・グレースビルと類似していますが、これは偶然ではありません。実は、ソロー・ビル建設の際に検討され、最終的に採用されなかった別デザイン案が、後にW・R・グレースビルの設計に転用されたため、このような類似性が見られるのです。

また、ソロー・ビルの上層階からは、遮るもののない壮大なセントラルパークの眺望を楽しむことができます。これは、立地とビルの高さが生み出す特権であり、入居するテナントにとって大きな魅力となっています。

名称の由来と歴史的エピソード

ソロー・ビルという名称は、このビルの主要な投資者であり、アメリカの不動産業界で有力な存在であったシェルダン・ソロー氏に由来しています。

ビルの歴史には、その名称を巡る興味深いエピソードがあります。1970年代初頭、化粧品会社エイボン・プロダクツがビルの多数のフロアを賃借していたことから、このビルが一時的に「エイボン・ビル」という通称で呼ばれるようになりました。しかし、所有者であるシェルダン・ソロー氏は、エイボン社がビルの命名権を不当に利用しているとして、対価の支払いを求めて訴訟を起こしました。エイボン社は1997年にはビルから退去していましたが、この訴訟は長期間続き、2005年5月にようやく審理が開始されましたが、そのわずか2ヶ月後には訴えが却下され、ソロー氏の主張は認められませんでした。

主なテナントと施設

ソロー・ビルは、その優れた立地とグレードの高さから、多種多様な有力企業がオフィスを構える場所として利用されています。主要なテナントとしては、ビルの地権者であるソロー・ビルディング・カンパニーをはじめ、フランスの大手金融機関であるナティクシス (Natixis) のアメリカ本社、コールバーグ・クラビス・ロバーツ (KKR)、アポロ・マネジメント (Apollo Management)、シルバー・レイク・パートナーズ (Silver Lake Partners) といった著名なプライベート・エクイティ・ファーム、オッチ・ジフ・キャピタル・マネジメント (Och-Ziff Capital Management)、ハイブリッジ・キャピタル・マネジメント (Highbridge Capital Management) などのヘッジファンドや法律事務所が入居しています。また、ファッションブランドのシャネルや、Avis Budget Groupなどもオフィスを構えています。

ビル内部には、入居者や来訪者のための施設も充実しています。地下には駐車場があり、58丁目側には小売店舗が設けられています。地下には人気のフレンチレストラン「ブラッスリー 8½ (Brasserie 8½)」があり、2階と3階は主に取引フロアとして利用されています。ロビーにはニューススタンドがあり、建物内をスムーズに移動するために24台の高速エレベーターが稼働しています。

ポップカルチャーにおける登場

ソロー・ビルは、その特徴的な外観から、しばしば映画やテレビドラマに登場し、人々の記憶に残る存在となっています。ビルの建設後、その個性的なファサードを見上げる人々が、同時にセントラルパーク側の歴史的建造物の裏側という、必ずしも美しくない部分まで見てしまうという声が上がったため、ビルの足元に視線を引きつける目的で、あるアート作品が設置されました。これは、著名なデザイナーであるイヴァン・チェルマイエフによってデザインされたもので、ビルの番地である「9」の数字を象ったカラフルな大型彫刻です。

また、ソロー・ビルやその内部は、様々な映像作品の舞台として使用されています。

人気ドラマ「セックス・アンド・ザ・シティ」では、ビル内のレストラン「ブラッスリー 8½」が登場しました。
同じく人気ドラマ「フレンズ」では、登場人物の一人であるチャンドラー・ビングがこのビルで働いているという設定がされています。
映画「スーパーマン」では、スーパーマンが宝石泥棒を逮捕するシーンでこのビルが使われました。
コメディ映画「ズーランダー」では、悪役であるムガトゥのファッション本社の外観として登場します。
怪獣映画「クローバーフィールド/HAKAISHA|クローバーフィールド_HAKAISHA」では、倒れた怪獣の腕がビルのファサードを滑り落ちるシーンで描かれています。
映画「ロスト・イン・アメリカ (Lost in America)」のラストシーンで、主人公の一人であるデヴィッド・ハワードが広告ディレクターと会う場面は、ビルの正面で撮影されました。
* 映画「ブライダル・ウォーズ」では、隣接するプラザホテルの背景にこのビルが映り込んでいます。

なお、このビルの名称である「ソロー・ビル」は、シューズストアチェーンの「ナイン・ウェスト (Nine West)」と混同されることが時折あります。

ソロー・ビルは、その建築美、立地、そしてポップカルチャーにおける影響力によって、ニューヨークのランドマークの一つとして、今もなおその存在感を放ち感を放っています。

もう一度検索