ソー線

ソー線：パリ郊外の鉄道史を語る一本の線路

パリから南へと伸びるソー線は、かつてフランスの首都を郊外と繋いでいた鉄道路線です。現在のRER B線の一部としてその機能は引き継がれていますが、その歴史と技術革新の物語は、今も人々の記憶に刻まれています。

開業とアルノー式急曲線技術

19世紀半ば、パリの南郊に位置するソーは、主要鉄道網から外れた地域でした。しかし、鉄道技術者ジャン＝クロード＝レピュブリカン・アルノーの発明により、状況は一変します。アルノーが考案した「アルノー式」と呼ばれる急曲線通過技術は、地理的制約の多い地域でも鉄道敷設を可能にしました。

1844年、アルノーはパリ・ソー鉄道会社を設立し、1846年にはパリのダンフェール＝ロシュロー駅（現在のリュクサンブール駅）とソー駅を結ぶ10.5kmの路線が開業しました。この路線は、アルノー式急曲線技術を駆使した、大胆な設計が特徴でした。ブール＝ラ＝レーヌからソーまでの区間は、半径30mという急カーブが連続し、丘陵地帯では半径50～70mの曲線で4回も180度近く方向転換する、まさに技術の粋を集めたものでした。 さらに、ダンフェール＝ロシュロー駅とソー駅の構内は、機関車の付け替えなしに折り返し運転を可能にするラケット状のループ線となっていました。

開業当初は1.75mの広軌でしたが、[1891年]]には標準軌]に[[改軌され、車両も近代化されました。1893年にはソー駅の位置がロバンソン駅に変更され、1895年にはパリ側の起点がリュクサンブール駅へと移転、利便性の向上が図られました。

パリ・オルレアン鉄道への買収と路線延長

[1857年]]、ソー線はパリ・オルレアン鉄道に買収されました。その後、1867年にはオルセーからサン＝レミ＝レ＝シュヴルーズ]まで路線が延長され、他の鉄道網との接続も強化されました。[[1867年にはプティト・サンチュール線と接続するソー・サンチュール駅（現シテ・ユニヴェルシテール駅）、1883年にはグランド・サンチュール線と接続するマッシー・パレゾー駅が開業しました。

電化とCMP（パリ首都鉄道）への移管

20世紀に入ると、パリ首都鉄道（CMP）が郊外路線の近代化計画を発表しました。これは後のRER（フランス国鉄近郊電車）の構想へと繋がります。ソー線はリュクサンブール駅からセーヌ川を越えて右岸まで延長され、北部郊外方面の路線と直通運転を行う計画でした。

1937年にはリュクサンブール - マッシー・パレゾー間が電化され、運転本数も大幅に増加しました。1938年のフランス国鉄発足時には、マッシー・パレゾー以南は国鉄に移管されましたが、リュクサンブール - マッシー・パレゾー間はCMPに移管され、メトロ路線図にも表示されるようになりました。1939年にはマッシー・パレゾーからサン＝レミ＝レ＝シュヴルーズ間も電化されましたが、サン＝レミ＝レ＝シュヴルーズからリムール間は廃止されました。パリ右岸への路線延長は、資金難と第二次世界大戦により頓挫しました。

RER B線への統合

1960年代以降、郊外路線のパリ中心部乗り入れが再び計画され、1977年にはソー線はセーヌ川を越えてシャトレ＝レ・アル駅まで延長され、RER B線の一部となりました。さらに1981年にはパリ北駅まで延長され、パリ北部郊外への直通運転を開始しました。

こうして、急曲線技術の粋を集めた路線として誕生したソー線は、時代の変化と共に発展し、現代のパリ郊外交通網の重要な一部となっています。その歴史と技術的挑戦は、現代の鉄道技術の発展に多大な貢献を果たしました。現在もRER B線の一部として活躍し、そして「ソー線」という名は、人々の記憶の中に生き続けています。

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