ソ連運輸省VL10形電気機関車

VL10形電気機関車

VL10形は、ソ連運輸通信省が1961年から導入した直流電化区間用の電気機関車です。主に重量貨物列車の牽引に使用され、ソビエト連邦の崩壊後も長期間に渡り製造されました。

概要

1950年代以降、ソ連の直流電化路線では重量級貨物列車牽引用にVL8形電気機関車が導入されましたが、増え続ける鉄道貨物輸送の需要に対応するため、より高性能な機関車が求められました。また、VL8形の台車の重量や騒音といった課題を解決する必要がありました。

そこで1960年、トビリシ車両工場で新型機関車の開発が始まり、翌1961年に最初の車両が登場しました。これがVL10形です。VL10形は、軸配置Bo-Boの片運転台式車体を2つ繋いだ連接式構造を基本としています。試作車と量産車では車体構造が大きく異なっています。

騒音や振動を軽減するため、車軸支持装置と台車枠の間には摩擦式の制振装置、台車枠と車体の間には油圧式ダンパーが設置されました。各車体の運転台側に集電装置が1基ずつ設置されています。

電動機はVL8形よりも出力を向上させたTL-2を採用し、主要部品は交流電気機関車のVL60形と共通化されました。制御方式は、低速時は抵抗制御、加速時には直並列組合せ制御に切り替わります。制動装置は空気ブレーキに加え、回生ブレーキも併用します。

車種

VL10形 (初期形)

1961年から製造が開始された最初の形式です。当初はトビリシ車両工場が製造を担当し、1969年以降はノヴォチェルカッスク電気機関車工場も製造に参加しました。試作車はT8形という形式名でしたが、1963年にVL10形に改称され、翌1964年から量産が開始されました。

製造時期によって車体構造が異なり、一部の車両はルハンスクディーゼル機関車工場製の2TE10L形ディーゼル機関車に類似した車体を有していました。また、交流区間向けのVL80K形と共通仕様の車体で製造された車両も存在します。1972年以降に製造された車両では、車体のエアフィルターが減少しました。電動機も改良され、補償巻線を追加したTL-2K-1に変更されました。

VL10U形

粘着力を増加させるため、重りを搭載して車両重量を増加させた形式です。台車の仕様変更や、メンテナンス性向上のための蓄電池の床下移設などの変更も行われました。車体構造や運転台部品、主要機器などはVL10形の他、VL80形やVL11形と共通化されています。

1974年にVL10形を改造した試験車が登場した後、1976年から量産が開始されました。ソ連崩壊後も製造が継続され、2005年まで製造されました。

VL10N形

1984年から1985年にかけて、ソ連北部のノリリスク鉄道向けに製造された形式です。回生ブレーキを搭載していません。ノリリスク鉄道の電化設備撤去に伴い、一部が他の路線に移籍したものの、多くは廃車されました。

VL10P形

チェリャビンスク電気機関車修理工場で改造された車両です。車体の連結面側に運転台が設置され、両運転台式機関車となりました。客車列車牽引に適した改造も施されました。

VL10K形、VL10UK形

チェリャビンスク電気機関車修理工場などで近代化・延命工事が施工された車両です。運転室の制御装置が更新され、総括制御が可能となりました。3車体連結編成も可能となり、前面形状も変更されました。

VL10-777

事業用車に改造された車両です。車内が改造され、職員輸送用に使用されましたが、火災により廃車となりました。

4E10形

VL10形を基に両運転台化・近代化改造が実施された形式です。ジョージア鉄道やロシア鉄道に導入され、主に旅客列車で使用されています。

プッシュプル列車への転用

"ウラル"、ED2形

1990年代に南ウラル鉄道支社でVL10形とER2形電車の中間車を連結した編成が登場しました。また、VL10形とED2T形電車やED9T形電車と同型の付随車を連結した編成も登場しました。これらの編成は2006年まで使用されました。

ED4DK形

VL10形とVL80形の間にED4MK形と同型の付随車を連結した交直両用列車です。試験結果が思わしくなく、運用に就くことなく廃車となりました。