ソ連邦大元帥

ソ連邦大元帥：最高軍事階級の栄光と影

ソ連邦大元帥は、ソビエト連邦における最高位の軍事階級でした。この称号は、1945年6月、大祖国戦争でのスターリンの功績を称え、ソ連最高会議幹部会令によって創設されました。ソ連邦元帥を上回る、他に類を見ない栄誉であり、スターリン自身にのみ与えられた称号です。

称号の創設とスターリンへの授与

大元帥の称号創設の背景には、モスクワの工場労働者や技術者からの請願、そして軍首脳部の提案がありました。1943年から議論はありましたが、スターリン自身は当初、この称号を拒否していました。しかし、ロコソフスキー元帥などの説得を経て、最終的に受諾に至ったのです。興味深いことに、スターリン側近の証言によると、スターリン自身はこの昇進を後悔していたとされています。

6月27日、スターリンはソ連邦大元帥に任命され、同時に勝利勲章とソ連邦英雄の称号も授与されました。この決定は、ソ連共産党政治局の提案と前線司令官の署名による書面に基づいて行われたものです。

継承問題とその後

スターリンの死後、この称号は事実上廃止されましたが、1993年まで法令上は残っていました。スターリンの後継者となったフルシチョフやブレジネフにもこの称号を授与しようという提案があった記録が残っていますが、実現することはありませんでした。

ソ連の影響を受けた中国や北朝鮮でも、大元帥の称号は存在しました。中国では毛沢東がこれを拒否したため廃止され、北朝鮮では金日成と金正日がこの称号を贈られました。なお、両国の肩章はソ連のものと類似したデザインとなっています。

制服と肩章：実現しなかったデザイン

ソ連邦大元帥の制服と肩章は、赤軍の後方部隊によってデザインされましたが、スターリン存命中には公式に承認されませんでした。スターリン自身は、大元帥の制服を着用することなく、独自の、やや色合いが異なる元帥服を着用していたようです。

ある証言によると、スターリンは特別に仕立てられた豪華な大元帥制服を一度見せられたものの、それを不評だったと伝えられています。その制服は、ロシア帝国陸軍大元帥クトゥーゾフの時代の様式を模倣したもので、襟が高く立ち上がり、ズボンには金色のランバが輝いていたといいます。スターリンは「誰にこんな格好をさせるんだ？」と尋ね、制服はその後着用されることはありませんでした。

実際、スターリンが着用していたのは、襟と4つのポケットを持つ標準的な元帥服でしたが、色は独特の薄い灰色でした。ボタンホールは赤く縁取られ、ボタンは金色でした。この制服は公式なものであり、多くの肖像画やポスターにも描かれています。

まとめ

ソ連邦大元帥の称号は、ソ連の歴史において、スターリンという一人にのみ与えられた、極めて特別な栄誉でした。その創設から廃止、そしてその周辺のエピソードは、ソ連という国家の複雑さと、スターリンという人物像を理解する上で重要な示唆を与えてくれます。その制服や肩章のデザイン、さらには周辺人物の証言は、歴史的な興味だけでなく、人間ドラマとしての魅力も持ち合わせています。

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