ゾディアックボート

ゾディアックボート

ゾディアックボート（英：Zodiac Boat）とは、フランスのゾディアック社によって開発・販売されている、インフレータブルボート（空気注入式のゴムボート）および複合艇に対する一般的な通称です。その優れた信頼性と多様性から、軍隊、政府機関、研究機関、そして民間レジャーに至るまで、世界中で広く利用されています。

特徴と軍事・救難における利用

ゾディアックボートは、特にその堅牢性と航行性能において高い評価を受けています。軍事用途においては、救難活動はもちろんのこと、沖合に停泊する大型艦船からの特殊部隊の沿岸への非公然揚陸や、水域に面した敵の重要施設に対する破壊工作といった特殊任務にも頻繁に投入されます。

中でも、船底が硬質な素材で構成された複合艇（Rigid-Hulled Inflatable Boat, RHIB）と呼ばれるタイプは、単なる空気注入式のゴムボートと比較して格段に高い能力を持ちます。岩礁地帯のような悪環境下でも船底が損傷しにくく、荒れた海況でも安定して航行し、高速を発揮することが可能です。これにより、一般的にイメージされるゴムボートの枠をはるかに超えた運用性能を発揮しますが、その高性能ゆえに一般的なインフレータブルボートより高価である傾向があります。

科学研究および民間での活用

ゾディアックボートの優れた自然環境下での運用能力は、軍事分野にとどまらず、様々な学術研究分野でも重宝されています。特に海洋学や海洋生物学の野外調査において、沿岸部や遠隔地の生態系調査に不可欠なツールとしてしばしば用いられます。

著名な例として、フランスの軍人でありスキューバダイビングの共同開発者、そして著名な海洋学者でもあったジャック＝イヴ・クストーが自身の海洋調査にゾディアックボートを多用したことが挙げられます。彼の製作した数々の海洋ドキュメンタリーフィルムには、調査船「カリプソ号」のデッキから進水させられ、調査チームを乗せて海上の様々な場所へと向かうゾディアックボートの姿が頻繁に登場し、その存在を広く知らしめました。

また、観光分野でもユニークな活用例が見られます。例えば、南極における極地性ペンギンの観察ツアーでは、大型船から営巣地に近い海岸までの移動手段としてゾディアックボートがしばしば利用されます。そのコンパクトながらも力強い外観と、想像以上の高い走破性能は、乗船した観光客を驚かせることがあるといいます。

歴史と普及

ゾディアックボートの歴史は古く、1939年には既にフランス軍に軍用ボートとして採用されています。以来、その信頼性と実用性から、現在に至るまで世界各国の軍隊や政府機関で標準的な装備として採用され続けています。さらに、その利用範囲は広がり、ダイビング、釣り、ウェイクボードなどの各種マリンレジャーにおいても幅広く利用されています。

創作作品への登場

ゾディアックボートは、そのミリタリーやアドベンチャーのイメージから、数多くの創作作品にも登場しています。

ゲーム
『コール オブ デューティシリーズ』
『CoD: Modern Warfare 2』：キャンペーン終盤で、シェパード指揮下の部隊や、追跡する主人公たちが使用します。
『CoD: Modern Warfare 3』：キャンペーン序盤の脱出シーンで使用されます。
『CoD: Black Ops II』：パナマ侵攻を題材にしたミッションで、主人公たちが海岸へ上陸する際に使用します。
『CoD: Ghosts』：敵勢力である連邦軍が使用する場面があります。
小説
『ピノキオ急襲』：ロシア海軍のスペツナズ部隊が、回収任務のために佐渡島へ上陸する際に使用します。
* 『遠い海から来たCOO』：フランス対外治安総局（旧SDECE）の工作員が、主人公たちが住む島へ上陸する際に使用します。

ゾディアックボートは、単なる移動手段としてだけでなく、物語の重要な場面で登場し、その高い機動性や特殊な運用シーンを象徴する存在として描かれています。

これらの事例からもわかるように、ゾディアックボートは多岐にわたる分野でその性能を発揮し、現代の小型舟艇の代表的な存在の一つとして認識されています。

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