ゾーアの戦い

ゾーアの戦い：プロイセン軍、奇襲を乗り越え勝利を掴む

ゾーアの戦いは、1745年9月30日、オーストリア継承戦争中に勃発しました。プロイセン軍が、オーストリア軍と少数のザクセン軍からなる連合軍と激突し、結果としてプロイセン軍が勝利を収めました。この戦いは、フリードリヒ大王率いるプロイセン軍が、敵の奇襲という不利な状況をいかにして乗り越え、勝利を掴んだのかを示す好例と言えるでしょう。

戦いの背景

ホーエンフリートベルクの戦いの後、イギリスはプロイセンとの再講和をマリア・テレジアに求めましたが、シュレージエンへの固執から女王はこれを拒否。カール・アレクサンダー・フォン・ロートリンゲン率いるオーストリア軍は、プロイセン軍撃退の命を受け、ベーメン北東部に進軍を開始しました。フリードリヒ大王は和平交渉の失敗を知り、戦力を分散させていたことから、シュレージエンへの撤退を決意。オーストリア軍はこれを追撃しました。

当初、カール公子は会戦を避けるつもりでしたが、女帝からの積極的な指示とロプコヴィッツらの主張を受け、プロイセン軍を追撃。プロイセン軍の撤退路を圧迫するため、パンドゥール部隊を派遣し、会戦の可能性を軽視していました。

9月29日、プロイセン軍はブルケルスドルフ村の北東に陣を構えましたが、オーストリア軍は森の中を進軍し、プロイセン軍に接近。ロプコヴィッツはグラナー高地を占領し、プロイセン軍の進路を遮断する態勢を整え、奇襲を計画しました。

戦闘の経過

9月30日午前5時、フリードリヒ大王は斥候からの報告で、オーストリア軍が会戦の準備をしていることを知ります。大王は、攻撃、防御、撤退の3つの選択肢の中から、敵兵力が自軍を大きく上回ることを承知の上で、あえて攻撃を選択。全軍にただちに出撃と戦列形成を命じました。

プロイセン軍は、主力をグラナー高地の攻撃に投入し、敵左翼を撃破するとともに街道を確保。左翼はブルケルスドルフ村を占領し、敵戦列に応戦する作戦を立てました。一方、カール公子は部隊の配置に手間取り、攻撃を躊躇。その間にプロイセン軍が戦闘準備を整え、先手を取って攻撃を開始しました。

午前6時ごろ、プロイセン軍右翼騎兵軍団がグラナー高地からの砲撃を強行突破し、オーストリア軍左翼側面に到達。大王は騎兵に丘を駆け登らせるという奇策を実行し、オーストリア軍を動揺させました。同時に、プロイセン軍歩兵部隊が東からオーストリア軍陣地を攻撃。精鋭部隊を投入し、丘の奪取を試みました。

激しい攻防の末、プロイセン軍は丘の頂上になだれ込み、高地の占領に成功。丘の南の戦闘でも、プロイセン軍は果敢に戦い、オーストリア軍を圧倒しました。午前11時ごろ、オーストリア軍は全面敗走に陥り、森の中に逃げ込みました。プロイセン軍はゾーア付近まで追撃し、戦果を拡大しました。

しかしそのころ、ナーダシュディ率いるハンガリー軽騎兵部隊がプロイセン軍陣地を襲撃。略奪や殺戮を行い、大王の秘書やフルート、ペットのグレイハウンドまで奪い去りました。レーヴァルトの部隊が急行すると、ナダスディ軍は撤退しましたが、この出来事はオーストリア軍にとって敗北の慰めとなりました。

戦いの結果と教訓

プロイセン軍は、危険な状況から一転して勝利を手にしました。フリードリヒ大王は、敵軍の接近を軽視していたこと、グラナー高地を放置していたこと、戦闘中陣地を空にしていたことなどを反省点として挙げています。

大王は、オーストリア軍の敗因として、カール公子が攻撃を躊躇したことを指摘。プロイセン軍が展開を始めた時点で、騎兵に全力で突撃を命じるべきだったと述べています。

ゾーアの戦いの勝利は、フリードリヒ大王にとって政治的なカードとなり、オーストリアに講和を決断させる圧力となりました。しかし、マリア・テレジアはイギリスの講和の申し出を拒否し、ザクセンやロシアとの連携を模索。大王はさらなる勝利でオーストリアを屈服させる必要に迫られました。

ゾーアの戦いは、プロイセン軍の勝利に終わりましたが、その勝利は多くの偶然と教訓の上に成り立っていました。フリードリヒ大王のリーダーシップと兵士たちの勇敢さは称賛に値しますが、同時に、敵の油断や連携の欠如といった要素も、プロイセン軍の勝利を大きく左右したと言えるでしょう。

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