タイの民族一覧

タイ王国は、多様な民族が共存する多文化国家として知られています。国土は便宜的に中央部、北部、東北部、南部の四つの地域に分けられ、それぞれの地域で主要な民族構成が異なりますが、どの地域も例外なく豊かな民族的多様性を持っています。

中央部には、主にタイ・ノイと呼ばれるタイ系の人々や華人（中国系の人々）が多く暮らしています。北部は、タイ・ヤイやタイ・ムアンと呼ばれるタイ系の人々に加え、山間部に居住する多くの少数民族（山地民）がいます。東北部では、ラオスとの繋がりが深いイサーン系の人々が多数を占め、南部には、マレー系でイスラム教を信仰する人々が多く暮らしています。このように、地域によって特色ある民族構成が見られますが、各地域内でも様々な民族が混じり合って生活しています。

タイ国内には、タイ系と呼ばれる様々な部族やその下位グループが数多く存在します。これらのタイ系の人々がタイの主要な民族グループを形成しています。近年では、タイに長く住む華人やモン族の一部が、タイの主流社会に同化する傾向も見られます。

タイの山間部に居住する人々は、しばしば「チャオ・カオ（山地民）」という呼称で括られますが、これは時に蔑称として用いられる言葉です。彼らの代表的なグループとしては、カレン族、モン族 (Hmong)、アカ族、ラフ族、ヤオ族、リス族などが挙げられます。これらの人々は独自の文化や言語を守って暮らしていますが、生活の場を求めて都市部に出稼ぎに行く人も少なくありません。

タイ南部には、主に海の生活を営む人々として知られるモーケン族がおり、「チャオ・タレー（海の民）」とも呼ばれます。彼らは伝統的に移動式の生活を送り、漁労や採集によって生計を立ててきました。

タイには多くの移民や難民も暮らしており、これらは総称して「プー・オッパヨップ」と呼ばれることがあります。その中でも特に華人の数が多いほか、カンボジア、ラオス、ミャンマー、マレーシアといった近隣諸国からの人々も相当数に及びます。彼らは経済的な機会を求めたり、自国の情勢から逃れたりしてタイに移り住んでいます。

スリランカ、インド、パキスタンなど、南アジア出身の移住者は「ケーク（お客）」と呼ばれることがあります。この呼称は、インドネシアやフィリピンからの移住者に対しても使われる場合がありますが、これはあくまで一般的な呼称であり、彼らもまたタイ社会の多様性を構成する一員です。

上記以外にも、タイには様々な民族が暮らしています。例えば、しばしばタイの少数民族として紹介されることがありますが、実際にはミャンマーからの移住労働者であるパダウン族（首長族）もいます。

また、タイ北部には、狩猟採集を主な生業とする少数民族、ムラブリ族がいます。彼らは、かつて農耕を試みたものの、集団の規模が小さく十分な収穫が得られなかったため、約500年から1000年前に再び採集生活へと回帰した、というユニークな事例として研究者（太田博樹氏らのチーム）によって考察されています。これは、農耕から採集生活に戻った非常に珍しい人種例とされています。

さらに、タイ南部パッタルン県の山林には、狩猟採集民であるマニ族が暮らしています。彼らは、縄文人の祖先とされる旧石器時代のホアビニアン文化に関連するDNAを受け継いでいるという研究結果も報告されており、人類史的な観点からも注目される存在です。

タイ王国の民族構成は、地理的な要因、歴史的な経緯、そして近年の人の移動など、様々な要素によって形成されており、非常に複雑で多様性に富んでいます。これらの多様な民族が共存することで、タイの豊かな文化や社会が成り立っています。

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