タイコム (人工衛星)

タイコム (Thaicom) とは

タイコムは、タイ王国のタイコム公開会社が運営する通信および放送衛星のシリーズです。アジア・太平洋地域を中心に、ヨーロッパやアフリカまでをカバーする広範な受信領域を持ちます。1991年にタイの企業シン・コンピューター通信社がヒューズ・スペース・コミュニケーション社と契約を結んだことから、タイ初の通信衛星打ち上げ計画が始まりました。その後、1993年12月17日に最初の衛星「タイコム1A号」が打ち上げられ、衛星放送事業が開始されました。

タイコムの歴史

タイコムの歴史は、タイの通信インフラを大きく発展させてきました。最初の衛星「タイコム1A号」には12本のCバンドトランスポンダが搭載され、日本からシンガポールまでの地域をカバーしました。その後、さまざまなモデルの衛星が打ち上げられ、サービスエリアや機能が拡大されました。特に「タイコム4号(IPSTAR)」は、世界最大のブロードバンド専用衛星として、高速インターネットサービスに貢献しています。

各衛星の概要

タイコム1A号: 当初「タイコム1号」として東経78.5度に配置されましたが、後に東経120度へ移動し、1997年6月に名称変更されました。総重量は1080kgで、Cバンドトランスポンダを12本搭載しています。
タイコム2号: 「タイコム1A号」と同系の機体で、Cバンドトランスポンダ10本とKuバンドトランスポンダ3本を搭載しています。
タイコム3号: 1997年に打ち上げられ、ヨーロッパ、アフリカ、東アジア、オーストラリアをカバーしていましたが、電気系統の故障で運用を終えました。総重量2652kgで、CバンドとKuバンドの多数のトランスポンダを搭載していました。
タイコム4号 (IPSTAR): 世界最大級のブロードバンド専用衛星で、45Gbpsのデータ速度を持ちます。東日本大震災の際には、インターネットや携帯電話回線の支援に貢献しました。総重量は6,486kgです。
タイコム5号: 高精細度テレビ放送に対応したサービスを提供しており、「タイコム3号」の代替として投入されました。総重量2800kgで、Cバンド25本とKuバンド14本のトランスポンダを搭載しています。
タイコム6号: 「タイコム5号」の後継機として開発された中型の人工衛星です。CバンドとKuバンドのトランスポンダを合計26本搭載し、アジアやアフリカ、東南アジアの地域をカバーしています。米国のオービタルサイエンス社と共同で製造され、2014年1月に打ち上げられました。
アジアサット6号/タイコム7号: 香港のアジアサテライトテレコミュニケーションズ社との協力で実現した衛星です。タイコムは、この衛星のトランスポンダの一部を利用する契約を結びました。Cバンドトランスポンダを28本搭載しており、開発はスペースシステム・ローラル社、打ち上げはスペースX社が行いました。
タイコム8号 (IPSTAR 2): 「タイコム4号」の後継機として開発された高速インターネット衛星です。24本のKuバンドトランスポンダを搭載し、タイ、南アジア、アフリカをカバーします。高精細度およびスーパーハイビジョン放送に対応しており、2016年5月に打ち上げられました。

テレポート

タイコムは、パトゥムターニー県に「タイコム・テレポートDTHセンター」を所有しています。この施設は、衛星通信の重要な拠点として機能しています。

運営形態

タイコムは、シン・コーポレーション・グループ傘下のタイコム公開会社によって運営されています。所有者は、初期には運輸省でしたが、2002年からは情報技術・通信省、現在はデジタル経済社会省となっています。

外部リンク

タイコム公開会社公式サイト
ブロードバンド衛星アイピースター（IPSTAR）公式サイト（日本語）

タイコムは、タイの通信インフラを支える重要な存在として、これからも技術革新を続け、サービスの向上に努めていくでしょう。

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