タイワンヒノキ

タイワンヒノキ（台湾檜）

タイワンヒノキ（Chamaecyparis taiwanensis または Chamaecyparis obtusa var. formosana）は、台湾固有のヒノキ科ヒノキ属の常緑高木です。かつては独立種として扱われることもありましたが、現在ではヒノキの変種とされることが一般的です。台湾では「台檜（タイヒ）」とも呼ばれています。

特徴

タイワンヒノキは、樹高が高く、樹皮は赤褐色で縦に細長く剥がれるのが特徴です。樹冠は円錐形を呈し、小枝は平面状に分枝し、鱗片状の葉が十字対生して扁平に覆っています。葉は、基準変種である日本のヒノキに比べてやや小さく、先端がわずかに尖っているのが特徴です。背腹の葉はひし形で、側葉は内側に湾曲し、裏面にはY字形の気孔帯があります。

春に花を咲かせ、雄球花は楕円形で黄色い花粉嚢を持ちます。球果は秋に成熟し、赤褐色の球形で、各果鱗に2〜5個の種子がつきます。種子は赤褐色で倒卵形、扁平で翼を持ちます。材の精油成分には、α-テルピネオール、T-ムウロロール、ボルネオール、α-カジノールなどが含まれ、特に抗菌作用で知られるβ-ツヤプリシン（ヒノキチオール）は、タイワンヒノキから初めて発見されました。葉の精油成分としては、α-ピネンが多く含まれています。

分布と生態

タイワンヒノキは、台湾北中部の標高1,800〜3,000mの山地帯に分布し、冷温帯の湿潤な環境を好みます。ベニヒ、ショウナンボク、ランダイスギ、タイワンスギなどの樹木と混生し、水はけの良い土壌で生育します。ベニヒよりも耐陰性が低いため、ベニヒの少ない高地でよく見られます。成長は比較的遅く、阿里山の山岳鉄道沿いにある大樹は特に有名です。

人間との関わり

タイワンヒノキの材は、優れた品質で知られ、建築材として広く利用されてきました。家具、浴槽、まな板、船、棺など、様々な用途に使われています。辺材は淡黄白色、心材はやや赤味を帯びた淡黄褐色で、木理は通直、肌目は精で光沢があり、特有の強い芳香を持っています。日本産のヒノキよりもやや重硬で耐久性に優れ、台湾産の材の中でも最も優良とされています。しかし、大木を中心に大量に伐採されたため、1990年に台湾では国有天然林の伐採が禁止され、現在ではタイワンヒノキの新材を入手することが非常に困難になっています。

日本統治時代には、日本でもヒノキの代用品として大量に伐採され、特に大径長尺材は、日本の寺社建築などに利用されました。明治神宮の大鳥居や薬師寺の金堂・西塔、靖国神社の神門などの再建にも用いられました。また、国宝や重要文化財の補修材としても使用されました。首里城の再建にも用いられましたが、2019年の火災による再建計画では、伐採禁止のため、日本産ヒノキアスナロやスギ、ヒノキなどが代替材として検討されています。台北の故宮博物院の床板にもタイワンヒノキが使われています。

現在では、伐採が禁止されているため、流木や風倒木から精油を採取するなど、限定的な産業利用が行われています。特に、ヒノキチオールを含む精油は、その抗菌作用から注目されています。

脚注

タイワンヒノキは、ヒノキチオールの最初の発見源である。
日本では、タイワンヒノキの木材は、貴重な文化財の修復にも用いられた。

関連項目

ヒノキ属：ヒノキ、サワラ、フッケンヒバ、ベニヒ、ローソンヒノキ
ヒノキチオール

外部リンク

Chamaecyparis obtusa var. formosana - Plants of the World Online
Ancient Giants of the Forest--Taiwan's False Cypresses - Taiwan Panorama
* 草木の香りを訪ねて──世界香り飛び歩記② タイワンヒノキと耐久性成分ヒノキチオール - コア東京Web

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