タイ軍事クーデター (2006年)

タイ軍事クーデター（2006年）の詳細

2006年9月19日、タイ王国で軍事クーデターが発生し、タクシン・シナワット首相の政権が倒されました。このクーデターは、反タクシン派の将校たちが主導し、下士官や兵士を率いて実行されました。首都バンコクの中心部を戦車で包囲し、政府庁舎を占拠するという大胆な行動でした。

クーデターの概要

クーデター発生時、タクシン首相は国連総会に出席するためニューヨークを訪問中でした。クーデターの一報を受けたタクシン首相は、陸軍総司令官のソンティ・ブンヤラットカリンを解任し、国軍最高司令官にクーデターへの対処を指示しましたが、事態を収拾することはできませんでした。最終的に、国軍最高司令官もクーデターに加担し、警察もこれに同調したため、無血でクーデターは成功しました。

クーデターを指揮したソンティ司令官は、国王ラーマ9世に忠誠を誓い、憲法を停止して戒厳令を全国に布告しました。そして、軍事政権が全権を掌握したと宣言しました。タクシン首相は帰国できなくなり、事実上の亡命生活を送ることになりました。クーデター後、軍部はタクシン派を一掃し、政治的発言権を増大させ、文民統制は機能しなくなりました。

クーデターの背景

タクシン首相は、地方の支持を基盤に地方の近代化を推進しました。経済格差の是正や低所得者への富の平等な分配を目指し、既得権益に切り込む政策を実行したため、特権階級からの不満が高まりました。2006年1月には、タクシン首相の親族による株式インサイダー取引疑惑が発覚し、政治不信が広がりました。

また、タクシン首相には就任当初から汚職の疑いが多数あり、これが不信感をさらに強めました。タクシン政権は下院を解散して再選挙を行いましたが、主要野党がボイコットしたため、憲法裁判所が選挙無効を宣言しました。その後、タクシン首相は退陣を示唆したものの復帰したため、反タクシン派の反発を招きました。2006年8月には、陸軍幹部による首相暗殺未遂事件も発生しています。

軍内部では、タクシン首相派と反タクシン首相派に分かれており、ルアンロー国軍最高司令官は「王室を巻き込むのは我慢の限界」と述べていました。ソンティ陸軍司令官は当初、クーデターの可能性を否定していましたが、反首相派は国王への忠誠を誓い、クーデターを決行しました。この時、タクシン首相が国連総会出席のため不在だったことも、計画的クーデターであるという見方を強めました。

国際社会の反応

国際連合

国連では、このクーデターが総会中に発生したため、緊急議題として取り上げられました。国連人権高等弁務官は、軍部が憲法を停止し、国会を解散したことを批判しました。また、軍事政権が戒厳令下で基本的人権を制限していることを非難し、基本的人権と自由の尊重を求めました。

アメリカ合衆国

アメリカ政府は、クーデター後、平和的解決と文民による民主的な政府への復帰を促しました。

日本

麻生太郎外務大臣は、軍部が国家の統治権を奪ったことを批判し、速やかに状況が正常化し、民主的な政治体制が回復されることを強く求めました。

クーデターの影響

日本

外務省や現地の日本人会は、在タイ日本人や旅行者に冷静な対応を呼びかけました。外務省は渡航安全情報を出し、旅行者に渡航の是非を検討するよう促しました。バンコク日本人学校は臨時休校となり、タイに進出している企業は工場の操業を一時停止しました。しかし、事態が沈静化したため、観光や業務渡航は通常通りに戻りました。

アイドルグループ『嵐』が予定していた日タイ修好120周年記念プレイベントは、このクーデターの影響で開催中止となりました。

参考資料

タイのクーデターについて（2006年9月22日・公益財団法人 国際金融情報センター）

関連項目

クーデター

外部リンク

* 国家安全保障評議会（旧民主改革評議会）の公式サイト (リンク切れ)

もう一度検索