タカネザクラ

タカネザクラ（高嶺桜）

タカネザクラは、バラ科サクラ属に分類される日本の野生種で、学名は Cerasus nipponica です。別名ミネザクラとも呼ばれ、主に山岳地帯に自生しています。

分布

亜寒帯を中心に、千島列島南部、北海道、本州中部山岳地帯の標高1500mから2800m付近に分布しています。遺伝的には、北海道から東北にかけての北東集団と、本州中部山岳地帯の南西集団に分けられます。高山に生える特徴から、ナナカマドやダケカンバなどの高山植物とともに見られることが多いです。

特徴

タカネザクラは落葉広葉樹の小高木または低木です。日本に自生する野生の桜の中では最も寒さに強い種類とされています。標高の低い場所では10mを超える高木に成長しますが、高山などの厳しい環境では2mほどの低木になります。樹形は盃状で、花は直径2～3cmの小輪から中輪の一重咲き。花弁の色は淡紅色で、中心部に向かうにつれて色が濃くなります。花と葉が同時に展開するのが特徴です。

花期は比較的遅く、低地では5月上旬頃、高山帯では6月頃に開花します。本州で最も遅く咲く桜は、北アルプスの標高2800m付近で見られます。高山帯では比較的早く開花するため、その存在はよく目立ちます。東京などの低地で植栽された場合、4月上旬に開花しますが、夏の高温や乾燥で枯れてしまうことが多いです。葉には深く細かい鋸歯があり、葉柄の上部には通常2つの腺点があります。秋には赤色から朱色のような橙色に鮮やかに紅葉します。

タカネザクラとチシマザクラ

分類学上はタカネザクラという種ですが、変種レベルではタカネザクラ（var. nipponica）とチシマザクラ（var. kurilensis）に分けられます。2010年代後半の時点では、葉や葉柄に毛がないものをタカネザクラ、毛があるものをチシマザクラとして区別していましたが、個体差による毛の長さのばらつきがあり、他の要素も考慮する必要があるため、分類の見直しが求められています。根室市では、旧気象庁根室測候所のチシマザクラを標本木としており、日本で唯一、チシマザクラの開花発表をしています。また、清隆寺には明治時代に国後島から移植されたチシマザクラが植えられています。根室市での花期は5月下旬で、日本の施政権が及ぶ平地では最も遅い開花となります。

種の保全状況評価

日本では、以下の都道府県でレッドリストの指定を受けています。

絶滅寸前種（環境省の絶滅危惧I類相当）: 奈良県
絶滅危惧II類(VU): 埼玉県

参考画像

[画像1] [画像2] [画像3] (画像は省略)

脚注

注釈

なし

出典

大場秀章 (1992). “日本のサクラ属植物の学名 [Japanese Cherry Trees under the Genus Cerasus (Rosaceae)]” (英語). 植物研究雑誌 (植物研究雑誌編集委員会) 67 (5): 276-281. doi:10.51033/jjapbot.67_5_8728.
勝木俊雄『桜』岩波書店〈岩波新書 新赤版 1534〉、2015年。ISBN 978-4-00-431534-6。

外部リンク

* ミネザクラの標本（長野県八ヶ岳で1947年7月12日に採集） （千葉大学附属図書館）

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