タカネヒカゲノカズラ

タカネヒカゲノカズラ

タカネヒカゲノカズラ（高嶺日陰鬘、学名：Diphasiastrum nikoense）は、ヒカゲノカズラ植物門アスヒカズラ属に分類される常緑性の植物です。名前の通り、主に高山帯に生育し、日本では本州中部以北や北海道で見られます。

特徴

タカネヒカゲノカズラは、ヒカゲノカズラを小型化したような外観を持ち、地表を長く這う匍匐茎から不規則に分岐します。直立する茎は高さ3〜12cm程度で、小枝は丸みを帯びています。葉は5列に付き、針状から線状披針形で、長さは2〜3mm。上部は内側に曲がり、先端は鋭く尖っています。胞子嚢穂は小枝の先に1〜2個つき、円柱形で長さ1〜3cm、柄はごく短いか、またはありません。

匍匐茎: 地上を這い、不規則に分岐する
直立茎: 高さ3〜12cm
葉: 5列に配置、針状〜線状披針形、長さ2〜3mm
胞子嚢穂: 円柱形、長さ1〜3cm

分布と生育環境

タカネヒカゲノカズラは、寒冷地の向陽斜面や岩屑地に自生します。国内では、石川県以東の本州、北海道、南千島に分布。国外では、北千島や朝鮮半島で見られます。また、北米に分布するDiphasiastrum sitchenseと同種とする説もあり、その場合は分布域がアメリカ中東部からアラスカ、グリーンランドまで広がります。

系統分類

分子系統解析の結果から、タカネヒカゲノカズラは基本染色体数n=23のアスヒカズラ属 (Diphasiastrum)として単系統性が支持されています。アスヒカズラ属を独立属としない場合は、ヒカゲノカズラ属(Lycopodium)のアスヒカズラ亜属として分類されることもあります。

近似種

タカネヒカゲノカズラとよく似た種として、以下のものが挙げられます。

チシマヒカゲノカズラ (Diphasiastrum alpinum): 側枝の葉がよく合着し、葉が4列に並ぶ点でタカネヒカゲノカズラと区別できます。タカネヒカゲノカズラとは交雑することがあります。
ミヤマヒカゲノカズラ (Diphasiastrum alpinum var. planiramulosum): チシマヒカゲノカズラの変種で、タカネヒカゲノカズラとよく似ていますが、葉が4列に並ぶことで区別可能です。
* Diphasiastrum sitchense: 北米に分布し、タカネヒカゲノカズラと形態が極めて類似しています。同種とする説もありますが、分子系統解析では差異が認められています。

まとめ

タカネヒカゲノカズラは、高山帯に生育する小型の常緑性植物であり、丸みを帯びた葉が特徴です。寒冷地の岩場や日当たりの良い斜面に見られ、近似種との識別には注意が必要です。分子系統解析による分類も進んでおり、今後の研究が期待されます。

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