チシマヒカゲノカズラ

チシマヒカゲノカズラ

チシマヒカゲノカズラ（千島日陰鬘、学名：Diphasiastrum alpinum、英名：alpine clubmoss）は、ヒカゲノカズラ植物門アスヒカズラ属に分類される常緑性のシダ植物です。広義のシダ植物としては、北半球で最も高緯度まで分布を広げていることで知られています。

特徴

チシマヒカゲノカズラは、ヒカゲノカズラに似て地面を這うように成長し、胞子を形成する胞子嚢穂をつけますが、全体的に小型です。主な特徴は以下の通りです。

匍匐茎: 地上や落葉の上を長く這う主軸は、直径1～2.2mm程度で、不規則に枝分かれします。
側枝: 高さ3～8cmほどで、斜め上または直立し、3～4回二又に分かれます。
葉: 4列に並んでつき、腹面の葉は背面の葉よりも短く、どちらも茎に密着します。側枝の中部までは茎と密着し、上部は内側に曲がり、先端は鋭く尖っています。
胞子嚢穂: 柄がなく、小枝の先端に長さ0.6～2cmの円柱形をしています。胞子葉は広卵形で、先端は鋭く尖り、縁は薄い膜質です。

染色体数や生殖様式については、日本産の個体ではまだ詳しくわかっていませんが、国外の報告では2倍体で有性生殖を行うことが示唆されています。

分布と生育環境

チシマヒカゲノカズラは、高山ツンドラや亜高山帯の、コケが生えた日当たりの良い斜面や岩屑地などのやや酸性の場所に自生します。日本では、福井県以東の本州と北海道に分布しています。国外では、極東ロシア、中央アジア、朝鮮半島、中国、モンゴル、北アメリカなど、寒冷な地域に広く分布しており、基準産地はスウェーデンです。

系統分類

分子系統解析の結果から、基本染色体数n=23のアスヒカズラ属（Diphasiastrum）として、単系統性が支持されています。アスヒカズラ属を独立した属として扱わない場合は、ヒカゲノカズラ属（Lycopodium）のアスヒカズラ亜属として分類されることもあります。

変種

ミヤマヒカゲノカズラ (Diphasiastrum alpinum var. plgniramulosum)

北海道の羊蹄山を基準産地とする変種で、側葉と枝の合着の程度が低いことが特徴です。タカネヒカゲノカズラに似ていますが、タカネヒカゲノカズラは葉が5列に並ぶのに対し、ミヤマヒカゲノカズラは4列に並ぶ点で区別できます。ただし、チシマヒカゲノカズラとの区別は難しいとされており、区別しない研究者もいます。

交雑

アスヒカズラ属の他の種との交雑も報告されており、特にアスヒカズラとの雑種はヨーロッパで比較的よく見られます。また、タカネヒカゲノカズラとの交雑も確認されています。

関連項目

アスヒカズラ属
タカネヒカゲノカズラ

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