タギシミミの反逆

タギシミミの反逆

『タギシミミの反逆』は、古代日本の皇位継承を巡る説話で、『古事記』や『日本書紀』に記されています。この物語は、初代天皇である神武天皇の崩御後、皇位を巡って兄弟間で起こった争いを描いています。特に、兄である手研耳命（たぎしみみのみこと）が、二人の弟を殺害しようと企てたことが主な内容となっています。

概要

神武天皇が崩御した後、皇子である手研耳命は、二人の弟、神八井耳命（かむやいみみのみこと）と皇太子であった神渟名川耳尊（かむぬなかわみみのみこと）を亡き者にしようと企てました。しかし、弟たちはこの企みに気づき、逆に手研耳命を討ち果たします。その後、弟である神渟名川耳尊が皇位を継ぎ、綏靖天皇（すいぜいてんのう）として即位しました。

詳細

三皇子の誕生

神武天皇（当時は神日本磐余彦尊）は、東征以前に日向国で吾平津媛（あひらつひめ）を娶り、手研耳命をもうけました。その後、東征後に事代主神の娘である媛蹈鞴五十鈴媛命（ひめたたらいすずひめのみこと）を正妃とし、二人の間に神八井耳命と神渟名川耳尊が誕生しました。神武天皇の42年、神渟名川耳尊は皇太子に立てられました。

手研耳命の計画

神武天皇は76年に崩御し、翌年、畝傍山東北陵に葬られました。皇太子であった神渟名川耳尊は、喪に服し、葬儀に尽力していました。一方、庶兄である手研耳命は、長年の政務経験がありましたが、仁義に欠ける人物でした。彼は、神武天皇の諒闇中に、二人の弟を亡き者にしようと企てました。この計画は、神武天皇崩御から3年後に実行に移されようとしました。

手研耳命の暗殺

この年の11月、神渟名川耳尊と兄の神八井耳命は、手研耳命の企みを知り（『古事記』では母の歌によって知ったと記されています）、これを阻止しようとしました。陵墓のことが終わった後、神渟名川耳尊は弓部稚彦（ゆげべのわかひこ）に弓を、倭鍜部天津真浦（やまのかぬちべのあまつまうら）に真麛鏃（まがじり）を、矢部には矢を作らせました。武器が完成すると、神渟名川耳尊は手研耳命を射殺すことを決意しました。

二人は、手研耳命が片丘の大窨（おおむろ）の中で、一人で大床に臥せっているのを見つけました。神渟名川耳尊は、兄である神八井耳命に「兄が射殺してほしい」と告げました。二人は窨に侵入し、神渟名川耳尊が戸を開けましたが、神八井耳命は恐れで手が震え、矢を射ることができませんでした。そのため、神渟名川耳尊は兄から弓矢を取り上げ、自ら手研耳命を射殺しました。最初の矢は胸に、二発目の矢は背中に当たり、手研耳命は息絶えました。

神渟名川耳尊の即位

神八井耳命は、神渟名川耳尊の力と決意を目の当たりにし、皇位を譲ることを決意しました。彼は「私が皇位を継ぐよりも、弟が継いだ方が良い」と進言し、自らは祭祀を行うことを決意しました。そして、翌年の1月8日、神渟名川耳尊は綏靖天皇として即位し、この年を綏靖天皇元年としました。

神八井耳命の子孫

神八井耳命は、綏靖天皇4年4月に亡くなり、畝傍山の北に葬られました。多氏（おおし）は、その子孫であるとされています。

この『タギシミミの反逆』の物語は、古代日本の皇位継承における兄弟間の争いを描いており、権力闘争の激しさと、その後の皇位継承の安定化への道のりを示唆しています。手研耳命の暗殺は、皇位継承の正統性を主張するための行動であり、その後の日本の歴史に大きな影響を与えました。

もう一度検索