タイ愛国党

タイ愛国党（Thai Rak Thai Party）とは

タイ愛国党（タイ語: พรรคไทยรักไทย、英語: Thai Rak Thai Party (TRT)）は、直訳すると「タイを愛するタイ人の党」という意味を持つ、かつてタイ王国に存在した政党です。

設立と隆盛

1998年（タイ仏暦2542年）に、タイの有力な財閥であるシン・コーポレーション・グループの会長、タクシン・シナワットによって設立されました。2001年以降、議席の過半数を占める与党となり、2005年の総選挙では圧勝を収め、タイ史上初の単独政権を樹立しました。この圧倒的な支持は、タクシン派の結集という側面が強く、政権内には副首相やエネルギー大臣、情報通信技術省大臣など、様々な要職にタクシン氏の側近たちが名を連ねました。

興味深いことに、元タイ共産党員も多く党に参画していました。彼らは、過去の政権から顧みられることのなかった人々への補償を示唆し、地方では元共産党員を動員するなど、独特な選挙戦略を展開しました。

政策と支持層

愛国党の政策は、開発独裁を志向しており、経済界からの支持を集める一方で、貧困層向けの施策によって、特に北部や東北部の農村地域で絶大な人気を博しました。しかし、反対勢力からは、党首であるタクシン氏の個人的な利権団体であるとの批判もありました。

党員数は公称で約1400万人、下院議員数は2006年の下院解散前には294人を数え、少数政党が乱立していたタイにおいて、史上稀に見る巨大政党でした。しかし、その利益誘導型の政治手法や、旧共産党の人脈を活用した政治スタイルは、軍やバンコクの中産階級からの懸念を招いていました。

2006年のクーデターと解党

2006年9月、軍事クーデターが発生し、タクシン首相は失脚。愛国党を支えてきた資金源も断たれ、政党活動は禁止されました。タクシン氏は失脚後、党首を辞任。後任としてジャトゥロン・チャイセーン副党首が党首代行を務めましたが、有力メンバーの離党が相次ぎ、党は存続の危機に陥りました。

そして2007年5月30日、タイ王国憲法裁判所は、2006年の下院総選挙における重大な選挙違反を理由に、愛国党に対して解党を命じる判決を下しました。

解党後の動向

愛国党に近い議員のうち、5年間の公民権停止を免れた議員たちは、小政党だった人民の力党に大挙して入党し、再起を図りました。同党はサマック・スンタラウェート前バンコク都知事を党首に選出しましたが、その後、憲法裁判所から再び解党を命じられ、そのメンバーの多くは、さらに新党であるタイ貢献党に移籍しました。

一方、非主流派は、チャワリット・ヨンチャイユット元首相（元新希望党党首）をリーダーに、別の政党を設立しようと試みましたが、旧愛国党勢力の分裂は、それほど大きな影響力を持つには至りませんでした。この流れの中で、タイ団結や中道主義党、その後のタイ誇り党などが誕生しました。

その後の影響

タイ愛国党の解党は、その後のタイ政治に大きな影響を与えました。タクシン氏の影響力は依然として大きく、彼の支持者たちは、様々な形で政治に関与を続けています。愛国党の歴史は、タイの政治における複雑な力関係と、社会の深い分断を象徴する出来事として、今もなお語り継がれています。

まとめ

タイ愛国党は、タイ政治における一大勢力であり、その隆盛と解党は、タイの政治史において重要な出来事です。タクシン氏というカリスマ的な指導者のもと、短期間で巨大政党へと成長を遂げた愛国党は、タイ社会に大きな変化をもたらし、その影響は現在にも及んでいます。

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