華系タイ人

華系タイ人とは

華系タイ人とは、タイ国内に居住し、タイ国籍を有する中国系住民のことです。彼らの多くは、1949年以前にタイへ移住した祖先を持ちます。特に潮州出身者が多く、潮州系タイ人とも呼ばれます。

概要

タイにおける華人コミュニティは、長年の混血により、タイ人と華人の区別が曖昧になっています。ここでは、統計上華人として認識され、自らを華人と認識するタイ国籍保有者を対象とします。タイ北部には、イスラム化した「チン・ホー族」と呼ばれる華人がいますが、彼らは少数民族として扱われるため、本稿ではあまり触れません。また、中国共産党の台頭を逃れてタイに移住した「國民黨」や、プーケットに多い「プラナカン」についても同様です。

華系タイ人の外見的特徴としては、華南地方出身者の血を引いているため、目が大きく、鼻が低い傾向があります。しかし、混血が進んでいるため、肌の色や顔つきには個人差があり、一概に特徴を述べることはできません。タイの華人は、同化が進んでおり、タイ人としての意識が強いです。また、中国本土の人々との間に特別な友好関係を築いているわけではありません。世代が進むにつれてタイ語を母語とするようになり、華語は祖父母との会話で使う程度になっている場合が多いです。これらの状況から、タイにおける華人社会はタイ社会にほぼ同化していると考えられます。

歴史

スコータイ時代

タイには古くから華人商人が訪れており、スコータイ王朝以前から存在していました。彼らの中には陶器の技術を持ち込み、スワンカロークで宋胡禄を開発した者もいます。しかし、宋胡禄に見られる中国風の様式は15世紀初頭には消滅し、スワンカロークの中国人陶工は次第に同化したと考えられています。宋胡禄は戦国時代の日本にも輸出され、茶人に愛用されました。

アユタヤ時代

アユタヤ王朝時代にも、華人商人が渡来し、アユタヤは中国へ頻繁に朝貢を行いました。1405年から1433年にかけての鄭和の遠征では、鄭和自身はタイを訪れませんでしたが、部下の馬歓らがタイを訪れた記録が残っています。これらの交流を通して、タイには中国人が移住し、子孫を増やしていったと考えられています。

スコータイが衰退しアユタヤが勢力を増すと、中国人に関する記録が両国の文献に見られるようになります。中国の文献には、タイで官吏となった中国人の記録も残っています。また、パタニ王国では、中国人官僚の林道乾がイスラム君主の下で権力を握り、無税貿易を可能にしたという記録も存在します。

一方、17世紀初頭に台頭した日本人町は、対外貿易で中国人商人の勢力を脅かしました。しかし、1627年に王位についたアユタヤ王プラーサートトーンは、日本人町を焼き討ちし、貿易を王室の専売特許としました。これにより、貿易業務は中国人に委託され、最大の貿易相手国であった日本との貿易も中国船を通じて行われたため、中国人にとってプラスに働きました。

ナーラーイ王の時代には、オランダと中国が対立し、オランダはアユタヤとの貿易で撤退を余儀なくされました。その後、フランスが貿易に関与しようとしましたが、ナーラーイ王の死により、アユタヤ王朝は鎖国政策を取りました。これらの出来事は、中国人貿易商にとって大きな利益をもたらしました。

1645年の清朝による華南征服は、中国人のタイへの移住を促進しました。この動きは18世紀頃まで続き、清朝がタイとの貿易を事実上禁止することもありましたが、雍正帝が朝貢貿易を認めたことで、タイは米を低関税で盛んに輸出しました。17世紀には、福建系の華人がタイランド湾の利権を握り、華南からの移民が増加しました。この頃から、タイの華人は華南出身者が主流となりました。中には官位を持つ者もおり、トンブリー王朝のタークシン王もアユタヤ時代には県知事を務めていました。

トンブリー時代

アユタヤ王朝がビルマによって破壊された後、潮州出身のタークシン王（鄭昭）がトンブリーにトンブリー王朝を樹立しました。遷都の理由としては、アユタヤが既に破壊されていたこと、トンブリー地区に潮州人のコミュニティがあったことが挙げられます。タークシン王は華人の商業活動を奨励し、彼の出身地である潮州を中心に、多くの華人がタイに移住しました。

チャックリー時代

その後、チャックリー王朝が成立し、ラーマ1世が即位しました。この王朝はアユタヤ王家の末裔を強調したため、タークシン王の時代よりも華人色の薄いものでしたが、清朝に対してはタークシン王と同じ「鄭」姓を名乗り、朝貢貿易を継続しました。国内でも華人商人の奨励が続けられました。しかし、ラーマ5世の時代に人頭税が引き上げられると、華人によるゼネストが発生し、華人の権利拡大が問題となりました。ラーマ6世は、この事件を受けて『東洋のユダヤ人』という論文を発表し、華人を批判しました。一方で、華人の帰化を奨励し、タイで生まれた華人に自動的にタイ国籍を付与する属地主義を導入したことで、華人は次第にタイ社会に同化していきました。なお、「東洋のユダヤ人」と呼ばれた華人には、客家人系が多いです。

2000年代以降

2000年代に入ると、タイでは中国（台湾を含む）企業の進出が再び活発化しました。中国と台湾の経済成長に伴い、華人の人口はさらに増加しており、華人社会は他のタイ人よりも経済的に裕福な場合が多く、タイ社会における経済の中華化が議論されています。タクシン首相が客家人であることもあり、客家人系の移民が特に多いと言われています。

2010年代以降

華人の人口は年々増加しており、中国系企業との経済的な繋がりはさらに強まっています。これに反発するタイ人も少なからずいますが、華人がタイ経済の中核を担っているため、両者の関係は切っても切れないものとなっています。

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