タコグラフ

タコグラフ：運行状況を記録する計器

タコグラフは、自動車に搭載される運行記録計器です。走行速度や時間などの運行情報を記録することで、車両の稼動状況を把握できます。日本では道路運送車両法に基づき、特定の車両への装着が義務付けられています。対象車両は、法律や国土交通省令によって段階的に拡大されており、バスやトラックなど、事業用車両を中心に装着が求められています。

タコグラフの歴史と対象車両

日本のタコグラフ装着義務化は1962年から始まり、当初は貸切バスや長距離路線バス、路線トラックが対象でした。その後、対象車両は段階的に拡大され、1967年には重量のあるトラックや一部のタクシー、1990年には特定の貨物運送事業者、そして2015年4月からは車両総重量7トン以上または最大積載量4トン以上のトラックへと広がっています。この拡大は、安全運転の確保や運行管理の効率化を目的としています。

従来型タコグラフの仕組み

従来型のタコグラフは、速度計と連動して動作します。速度計から回転数情報を取得し、感圧記録紙（タコチャート紙）に走行速度と時間をグラフとして記録します。記録紙は24時間で1回転し、縦軸に速度、横軸に時間を示す折れ線グラフが描かれます。走行距離は、速度と時間の積から算出できます。記録紙の交換は、速度計を開いて行います。機種によっては、記録部が速度計から分離されているものや、時計を内蔵したものもあります。一部の機種では、エンジン回転数なども記録可能です。

タコグラフの効用と問題点

タコグラフは、運行管理の向上に役立ちます。速度や運転時間を分析することで、速度超過や長時間運転などを予防するための指導が可能になります。運転者にとっても、自身の運転状況を客観的に把握できるツールとなります。また、運転日報等と併用することで、休憩時間の確保状況なども確認できます。

しかし、過剰な束縛と感じる運転者もいます。従来型では記録紙への改ざんが容易だったため、走行速度の不正な報告などが問題となっていました。また、タコグラフの記録とオービスの測定値に誤差が生じるケースもあり、法的紛争の要因となることもありました。

デジタルタコグラフの登場

近年では、デジタルタコグラフが広く普及しています。記録媒体はメモリーカードなどで、データの改ざんは困難です。記録項目も多様化しており、速度や時間、距離、エンジン回転数のほか、急加速・急減速、ドアの開閉、GPS位置情報、空車・実車情報、積載情報など、様々な情報を記録できます。タクシーメーターに内蔵されたものや、ドライブレコーダーと連携した機種もあります。データはパソコンなどで解析でき、運行管理の効率化に貢献します。また、テレマティクス技術と組み合わせることで、リアルタイムなデータ収集や遠隔地からの運行管理が可能になり、最適な配送ルートの検討や配車などに役立ちます。2024年4月からは貸切バスへのデジタルタコグラフ搭載が義務化されました。

主要メーカー

日本では、トランストロン、矢崎エナジーシステム、デンソー、富士通、堀場製作所、光英システムなどがデジタルタコグラフを製造・販売しています。デンソーと富士通は、トランストロンのOEMやODM製品も提供しています。

諸外国でのタコグラフ

欧州連合（EU）では、日本と同様にタコグラフが使用されており、デジタル化が進んでいます。EUのデジタルタコグラフは、運転手カード、事業者カード、整備工場カード、警察カードの4種類のカードを使用します。各カードは、個々の運転手や事業者、整備工場、警察を識別し、運行記録へのアクセスを管理する機能を持ちます。

北米では、Electronic Logging Device（ELD）と呼ばれる電子運行記録装置が義務付けられています。タブレット端末やスマートフォンアプリを使用するケースもあり、運行記録に加え、自動車税や燃料税の計算にも利用されます。

まとめ

タコグラフは、安全運転と効率的な運行管理に不可欠な機器です。デジタル化の進展により、機能が向上し、データの活用範囲も広がっています。今後、更なる技術革新と法規制の整備によって、より安全で効率的な輸送システムの実現が期待されます。

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