タコマナローズ橋

タコマナローズ橋の概要

タコマナローズ橋（Tacoma Narrows Bridge）は、アメリカ合衆国ワシントン州のピュージェット湾口にかかる著名な吊橋です。この橋は、1940年に開通し、同年11月に落橋するという悲劇的な歴史を持ちます。この事件は構造物の設計や風の影響に関する重要な教訓をもたらしました。

初代タコマナローズ橋の建設背景

初代のタコマナローズ橋は1940年に、全長1600メートル、吊径間853メートル、幅員11.9メートルで開通しました。この橋は、太平洋側の港湾都市タコマ市と海軍工廠を有するブレマートン市を結ぶために建設されました。当時、周辺地域の開発が進展しており、タコマ川を渡る交通の妨げとなる存在だったため、橋の建設が求められていました。

設計はレオン・モイセイフが担当し、当時の最新技術に基づいて、軽量で強度を確保することが期待されました。しかし、設計の過程でコスト制約により、幅員が狭くされ、いくつかの専門家からの懸念が寄せられました。橋が開通した後、風の影響で大きく揺れることが多かったため、設計が問題視されるようになりました。

落橋の経緯

1940年の開通時、タコマナローズ橋は多くの交通を受け入れましたが、問題は開通後も続きました。風が強い日に橋が異常に揺れることが確認され、開通間もなくから揺れは増していきました。1940年11月7日、早朝からの強風によって、橋はさらに激しい揺れを伴い、遂に構造的な限界を迎えました。午前中に振動が大きくなり、主径間の一部が崩れ、その後完全に崩壊する事態に至ったのです。

この時、橋の上は無人だったため人的被害は免れましたが、車に残されていた犬が犠牲となる不幸もありました。この劇的な崩壊の様子は映画用カメラで撮影され、構造物が風の影響を受けて生じる振動についての詳細なデータが得られる結果となりました。

教訓と後の影響

タコマナローズ橋の落橋は、風による揺れに関する理解を深め、今後の吊橋設計に大きな影響を与えました。事故後の調査では、構造の欠陥や振動のメカニズムが解明されました。特に薄い桁を持つ橋では、自励振動のリスクが高まることが指摘され、その後の長大吊橋の設計において補剛トラスの重要性が認識されました。

新たに建設されたタコマナローズ橋は1950年に開通し、「丈夫なガーティ」の愛称で親しまれています。新しい橋は、落橋の教訓を生かした設計により、安定した交通を提供し続けています。さらに、2007年には新たな吊橋も開通し、交通の流れを支える重要な役割を果たしています。

結論

タコマナローズ橋の歴史は、設計と風の関係、そしてその結果として得られた教訓の重要性を強調しています。今日でも、橋梁技術や構造工学の分野で評価され続ける事例として、多くの研究が進められています。

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