タジ・マハール (アルバム)

タジ・マハール：同名デビュー・アルバム

アメリカ合衆国を代表するブルース・ミュージシャン、タジ・マハールが1968年に世に送り出した、自身の名を冠した初のスタジオ録音作品です。このアルバムは、古いブルースの魂と新しい時代のサウンドが見事に融合した革新的な作品として、その後のキャリアの礎を築きました。

アルバム発表の背景

タジ・マハールは、本作でのソロデビューに先立ち、ギタリストのライ・クーダーらと共にバンド「ザ・ライジング・サンズ」を結成していました。このバンドはコロムビア・レコードとの契約を獲得するに至りましたが、結局リリースされたのはシングル盤1枚のみに終わり、録音された多くの楽曲は日の目を見ることなく、長らくお蔵入りとなりました（これらの音源が正式に発表されたのは1992年のこと）。

その後、タジ・マハールはソロアーティストとしてコロムビアとの契約を継続。満を持して1968年に、本作『タジ・マハール』でソロとしての輝かしいキャリアをスタートさせました。

ジャケットデザイン

オリジナルLPレコードのジャケットには、ロサンゼレスにあるヴィクトリア様式の住宅の前でギターを抱えるタジ・マハール本人の写真が用いられていました。この写真には、鳥やチョウといった自然の要素がコラージュされていましたが、タジ・マハール自身は、このデザインが自身の意図するものではなかったと語っています。

この背景を受けて、2000年に発売されたリマスター版CDでは、ジャケットデザインが変更されました。オリジナルの写真からコラージュ部分が取り除かれ、写真とタイトルロゴのみという、よりシンプルなデザインが採用されています。

評価と影響

本作は発表当時から高い評価を獲得しています。音楽評論家のブルース・イーダーはオールミュージックにおいて本作に満点の5点を付け、「多くのベテラン・ブルース・アーティストが（多くの場合、レーベルの意向により）サイケデリックな方向へ傾斜し始めた時代に、タジ・マハールは伝統的なブルースとモダンなサウンドを力強く、そして刺激的に融合させた作品を提示した」と絶賛しました。

また、このアルバムに収録されているタジ・マハール自身の作曲による楽曲「EZライダー」は、他のアーティストにも影響を与えています。有名な例として、ブルース・ギタリストのジョニー・ウィンターが、1978年のアルバム『ホワイト、ホット&ブルー』の中でこの曲をカバーしています。

主な収録曲

本作には、ブルースの巨匠たちの楽曲から自身のオリジナル曲まで、バラエティ豊かな楽曲が収録されています。

リーヴィング・トランク ("Leaving Trunk") - スリーピー・ジョン・エステス (Sleepy John Estes) 原曲
ステイツボロ・ブルース ("Statesboro Blues") - ブラインド・ウィリー・マクテル (Blind Willie McTell) 原曲
チェッキン・アップ・オン・マイ・ベイビー ("Checkin' Up on My Baby") - サニー・ボーイ・ウィリアムソン (Sonny Boy Williamson) 原曲
エヴリバディズ・ゴット・トゥ・チェンジ・サムタイム ("Everybody's Got to Change Sometime") - スリーピー・ジョン・エステス (Sleepy John Estes) 原曲
EZライダー ("EZ Rider") - タジ・マハール (Taj Mahal) 作曲
ダスト・マイ・ブルーム ("Dust My Broom") - ロバート・ジョンソン (Robert Johnson) 原曲
ダイヴィング・ダック・ブルース ("Diving Duck Blues") - スリーピー・ジョン・エステス (Sleepy John Estes) 原曲
セレブレイテッド・ウォーキン・ブルース ("The Celebrated Walkin' Blues") - トラディショナル (Traditional) 原曲

参加ミュージシャン

本作の制作には、タジ・マハールを中心に、才能あるミュージシャンたちが参加しました。

タジ・マハール：ボーカル、ハーモニカ、スライドギター
ジェシ・エド・デイヴィス：リードギター、ピアノ
ライ・クーダー：リズムギター、マンドリン
ビル・ボートマン：リズムギター
ジェイムズ・トーマス：ベース
ゲイリー・ギルモア：ベース
サンフォード・コニコフ：ドラムス
チャールズ・ブラックウェル：ドラムス

『タジ・マハール』は、後のブルース・ロックやルーツ・ミュージックにも大きな影響を与えた、音楽史における重要な作品の一つと言えるでしょう。

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