タタールスタン航空363便墜落事故

タタールスタン航空363便墜落事故

タタールスタン航空363便墜落事故は、2013年11月17日にロシアのタタールスタン共和国、カザン国際空港で発生した悲劇的な航空事故です。モスクワ発カザン行きの同便は、着陸進入中に墜落し、乗客乗員50名全員が死亡するという痛ましい結果となりました。

事故の概要

事故が発生したのは、現地時間19時20分（UTC+4）。タタールスタン航空（当時はアク・バルス・アエロが運航）のボーイング737-500型機（機体記号VQ-BBN）が、カザン国際空港への着陸進入中に滑走路手前に墜落しました。

事故調査委員会の最終報告によると、事故原因はパイロットの操縦ミスであると結論付けられました。しかし、訓練不足の操縦士を起用した航空会社の安全管理体制の問題も指摘され、この事故を機にタタールスタン航空は廃業を余儀なくされました。

事故機の詳細

事故機のボーイング737-53A（機体記号VQ-BBN）は、製造から23年以上が経過した機体でした。様々な航空会社で使用された後、2008年後半からタタールスタン航空で使用されていました。

この機体は、過去にも2件のインシデントを起こしています。

2001年12月17日：リオ・スール航空運用中に、悪天候下で着陸進入中に滑走路手前に墜落し、降着装置が破損。
2012年11月26日：カザン離陸後、客室の与圧に関する問題が発生し、引き返し。

事故の経過

363便は、モスクワのドモジェドヴォ空港を現地時間午後6時25分に離陸し、カザン国際空港へ向かいました。最終進入が不安定になったため、乗員は着陸復行を試みましたが、直後に機首下げ75度、機速242ノット (448 km/h)で滑走路と誘導路の間にほぼ垂直に落下し、爆発・炎上しました。

空港の監視カメラが墜落の瞬間を捉えており、その映像は衝撃的なものでした。事故当時、空港は風が強く曇りであると報告されています。

死傷者

乗客44名、乗員6名、計50名全員が死亡しました。犠牲者の中には、タタールスタン共和国のルスタム・ミンニハノフ大統領の息子であるイレク・ミンニハノフ氏や、ロシア連邦保安庁タタールスタン共和国局長のアレクサンドル・アントノフ氏も含まれていました。

事故調査

国家間航空委員会（IAC）が事故調査委員会を立ち上げ、現地調査を開始しました。フライトデータレコーダー（FDR）とコックピットボイスレコーダー（CVR）が回収されましたが、ボイスレコーダーは損傷が激しく、記録されたデータは失われていました。

FDRの初期解析結果から、363便は着陸を試みたものの、何らかの原因で着陸を取りやめ、再度着陸を試みた際に墜落したことが判明しました。また、墜落直前までエンジンやシステムにトラブルは発生していなかったことも確認されています。

最終報告

2015年12月24日に発表された最終報告書では、事故原因として以下の点が指摘されました。

航空会社の危機管理・安全管理の機能不全
訓練不足のクルーを起用した航空会社や関係当局の責任
着陸復行時のオートパイロット解除に対する認識不足
異常な体勢からの回復に必要な操縦技術の欠如
ナビゲーションシステムの不具合
パイロットの総合的な操縦技術不足、機器のメンテナンス不足、管制の積極的な補助の欠如

事故後

事故後、ロシア連邦航空局はタタールスタン航空の航空運送事業許可を取り消しました。また、国内で運航されている西側製の航空機の使用年数の上限を15年とする法改正が提案されました。

まとめ

タタールスタン航空363便墜落事故は、多くの人命が失われた悲劇的な事故でした。事故原因は複合的な要因が絡み合っていましたが、その背景には航空会社の安全管理体制の問題があったことは否定できません。この事故を教訓として、航空業界全体で安全意識を高め、より安全な空の旅を実現していくことが重要です。

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