タッソー、悲劇と勝利

フランツ・リストの交響詩「タッソー、悲劇と勝利」

「タッソー、悲劇と勝利」（S.96）は、フランツ・リストが作曲した2番目の交響詩であり、しばしば「タッソ、嘆きと凱旋」とも表記されます。この作品は、イタリア・ルネサンス期の詩人トルクァート・タッソーの生涯を音楽的に描いたもので、彼の悲劇と勝利を対比的に表現しています。

作曲の背景

この作品は、1849年のゲーテ生誕100周年祭において、ゲーテの戯曲『タッソー』の序曲として作曲され初演されました。しかし、作曲の着想自体は1847年8月頃に遡ります。リストは、かつてヴェネツィアでゴンドラの船頭がタッソーの「解放されたエルサレム」を歌うのを聞いて感銘を受け、その旋律を基にピアノ曲を制作。後に、ゲーテの戯曲の序曲の依頼を受け、このピアノ曲を管弦楽に編曲したのがこの交響詩の原型となりました。

構成と特徴

当初、リストはタッソーの生涯を3つの側面、すなわちフェラーラでの愛と苦悩、ローマでの栄光、そしてヴェネツィアの船頭の歌によって象徴される永遠の生命として表現することを考えていました。しかし、最終的にはタッソーの「悲劇」と「勝利」の二つの部分で構成される作品として完成しました。1849年の初演後も改訂が重ねられ、1854年4月19日の再演で現在の形となりました。

楽器編成

この作品は、以下の楽器編成で演奏されます。
ピッコロ
フルート2
オーボエ2
クラリネット2
バスクラリネット
ファゴット2
ホルン4
トランペット4
トロンボーン3
チューバ
ティンパニ
トライアングル
小太鼓
大太鼓
ハープ
弦五部

演奏時間と構成

演奏時間は約20分です。楽曲は、ヴェネツィアの船頭の歌に由来するタッソーの主題がバスクラリネットによって提示される第1部と、高らかな勝利が謳われる第2部から構成されています。第1部では、タッソーの苦悩や悲劇が表現され、後半では一転して、勝利と栄光が描かれます。この対比が、聴衆に深い感動を与えるのです。

タッソーの主題

楽曲の中心となるタッソーの主題は、ヴェネツィアの船頭が歌う旋律が基になっています。この旋律は、曲全体を通して変奏され、タッソーの様々な感情や運命を表現する重要な役割を担っています。

まとめ

「タッソー、悲劇と勝利」は、リストの卓越した作曲技術と、タッソーのドラマチックな生涯が融合した傑作です。劇的な構成と美しい旋律は、聴衆を感動と興奮の世界へと誘います。この作品を通して、リストはタッソーの苦悩と栄光、そして不朽の精神を現代に蘇らせていると言えるでしょう。

外部リンク

* タッソー、悲劇と勝利の楽譜 - 国際楽譜ライブラリープロジェクト)

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