タトラカー

タトラカー：東欧を代表する路面電車

タトラカーは、チェコ（旧チェコスロバキア）のČKDタトラで開発・製造された路面電車車両の総称です。東欧諸国を中心に世界各国に導入され、都市の公共交通を支えました。ここでは、その概要、形式、歴史、そして現代における動向について解説します。

概要

第二次世界大戦後、東側諸国では都市の復興が急務となり、交通機関の整備が求められました。従来の小型二軸車では輸送力が不足していたため、ČKDタトラは1947年にアメリカの高性能路面電車PCCカーのライセンス生産契約を締結。1951年から1999年までに、多数のタトラカーが製造されました。

経済相互援助会議（コメコン）の成立後、タトラカーは東側諸国の標準型路面電車として大量に供給されました。多くのモデルは片運転台・片側扉でしたが、両運転台・両側扉の車両も製造され、路線の需要に対応しました。

1998年にČKDタトラがシーメンスに吸収された後、超低床電車の普及や車両の老朽化により、廃車や譲渡が進んでいます。しかし、制御装置の交換や車体更新などの近代化も行われ、タトラカーの技術を流用した新型車両も製造されています。ドレスデン市電のカーゴトラムは、引退したタトラカーの部品を再利用した好例です。

形式

ČKDタトラ製のタトラカーには、以下の形式があります。

T1: PCCカーの技術を基に開発された第一世代。試作車を経て量産され、チェコスロバキアの都市やポーランド、ソ連に導入されました。
T2: T1から寸法や外観が変更された形式。ソ連向けには扉の数を減らし、座席数を増やしたT2SUが製造されました。
T3・B3: T2の問題点を改良した第三世代。動力車のT3は大量に製造され、1990年代以降は改良型や近代化改造車が登場しました。
T4・B4: 車体幅を狭めたモデルで、東ドイツやソ連、ルーマニア、ユーゴスラビア向けに製造されました。東ドイツでは、T4DがB4Dを牽引する「Großzug」と呼ばれる編成で使用されました。
T5: 車体形状が大きく変更された第五世代。全金製の角ばったデザインが特徴で、ハンガリーのブダペスト市電向けにT5C5が製造されました。
T6・B6: 1980年代以降に登場した第六世代。安価かつ整備の簡略化を追求した設計で、T6B5、T6A2・B6A2、T6A5、T6C5などのタイプがあります。
T7: T6B5を基にした設計で、定員数が増加。ノルウェーのオスロ市電にも導入されました。
K1: 定員数が多い連接車の試作車。電子機器の故障が相次ぎ、短期間で運用を終えました。
K2: K1の試験結果を踏まえ、T3の電子機器を用いた連接車。社会主義圏の各都市に導入され、近代化工事も行われています。
K5: エジプト・カイロ市電向けに製造された連接車。亜熱帯気候に対応する設計でしたが、早期に営業運転から撤退しました。
KT4: ボギー台車が設置された連節車体。東ドイツ、ソ連、ユーゴスラビア、北朝鮮向けに製造され、近代化も進められています。
KT8D5: 多数の乗客を積載出来る連接車。チェコスロバキア、ユーゴスラビア、北朝鮮などの各都市に導入され、中間車体を低床化したモデルも登場しました。
RT6: 車内の60％が低床構造となっている超低床電車。チェコやポーランド向けに製造されましたが、故障が相次ぎました。
RT6S: RT6N1と同型の車体を持つ超低床電車。ČKDタトラの破綻により、1編成のみの製造となりました。
RT8D5: マニラ・メトロレールの開業に合わせ、KT8D5を基に製造された連接車。ČKDタトラがシーメンスに吸収される前に登場した最後の新形式です。
T2D・B2D: 東ドイツのゴータ車両製造が製造していた車両の設計を受け継いだ二軸車。T4・B4では輸送力が過剰となる小規模路線へ向けて生産が行われました。

未成車両

1990年代にČKDタトラは、従来のタトラカーに代わる標準型車両として、複数の超低床電車モデル（Lシリーズ）を設計していました。しかし、2000年にČKDタトラが倒産したため、全形式とも計画のみに終わりました。

関連項目

タトラカーは、東欧の都市交通を支えた重要な存在です。その技術は、PCCカーやデュワグカーといった他の路面電車にも影響を与えました。また、カーゴトラムのように、タトラカーの部品を再利用した車両も存在します。

関連企業としては、タトラカーの更新工事を手掛けるアライアンスTWやシュコダ・トランスポーテーション、タトラカーのライセンス生産を行っていたタトラ＝ユークなどが挙げられます。

まとめ

タトラカーは、東欧の都市交通を支えた路面電車であり、その多様な形式と歴史は、都市の発展とともに歩んできました。現在では、超低床電車の普及や老朽化により数を減らしていますが、近代化や技術の流用によって、その遺産は受け継がれています。

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