タフマースブ2世

シャー・タフマースブ2世：動乱のサファヴィー朝を駆け抜けた君主

シャー・タフマースブ2世（1704年 - 1740年）は、サファヴィー朝末期のイランを統治した君主です。彼の治世は、王朝の衰退と混乱、そしてその中で台頭したナーディル・シャーの存在によって特徴づけられます。

即位までの経緯

タフマースブは、シャー・スルターン・フサイン・サファヴィーの息子として生まれました。当時、サファヴィー朝は衰退の一途をたどっており、各地で反乱が頻発していました。特に、カンダハール地方のギルザイ部族は独立を宣言し、首都イスファハーンを包囲する事態となりました。

1722年、イスファハーンは陥落し、スルターン・フサインは退位させられました。ギルザイ族の族長ミール・マフムードがシャーを名乗り、サファヴィー朝の権威は失墜しました。タフマースブは、イスファハーン攻囲戦の最中に太子に指名され、カズヴィーンに避難しました。イスファハーン陥落後、イラン各地でサファヴィー朝の後継を自認する勢力が割拠する中、タフマースブはカズヴィーンでシャー位を宣言しました。

ナーディル・シャーの台頭

タフマースブは、アフシャール族の族長であったナーディル・クリー・ベグ（後のナーディル・シャー）の軍事的支援を受けました。ナーディルは「タフマースプ・クリー・ハーン」（タフマースプのしもべ）と名乗り、タフマースブの権威を利用して勢力を拡大しました。ナーディルの指揮下に入ったタフマースブ軍は、1729年にヘラートのアブダーリー族を破り、さらにギルザイ族を破ってイスファハーンを奪還しました。7年ぶりにイスファハーンに入城を果たし、サファヴィー朝の再興をアピールしました。

失脚と最期

しかし、タフマースブの治世は長くは続きませんでした。オスマン帝国に奪われたアーザルバーイジャーン地方への遠征に失敗すると、ナーディルによって退位させられました。ナーディルは、タフマースブの息子であるアッバース3世をシャーに擁立し、自らは摂政として実権を掌握しました。

タフマースプとその息子アッバースは、ホラーサーン地方に幽閉されました。1740年、ナーディル・シャーが暗殺されたという噂が広まると、親サファヴィー家を支持する反乱の動きが起こりました。これを警戒したナーディルの息子レザークリー・ミールザーは、タフマースプとアッバースを殺害し、サファヴィー朝の再興の芽を摘み取ろうとしました。

シャー・タフマースブ2世は、激動の時代に翻弄された君主でした。彼の生涯は、サファヴィー朝の衰退と、新たな権力者ナーディル・シャーの台頭を象徴しています。

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