タブク (小銃)

タブク (Tabuk): イラク製AK系自動小銃

タブクは、バアス党政権下のイラクで製造された自動小銃の総称です。ユーゴスラビアのツァスタバ M70を基に開発されました。

歴史

イラクは、長年AK系小銃を輸入していましたが、1970年代後半に国産化を計画します。しかし、ソ連からの支援が得られず、最終的にユーゴスラビアと東ドイツの技術援助により、M70の国内生産が可能となりました。タブクの名は、7世紀のイスラム史における重要な戦い「タブークの戦い」に由来します。

1979年、アル・カーディシーヤ機関がバービル県に兵器工場を建設し、翌年からタブクの生産を開始しました。イラン・イラク戦争、湾岸戦争、イラク戦争で使用されました。

しかし、タブクの普及は限定的でした。製造記録がなく正確な製造数は不明ですが、共和国防衛隊など一部組織に配備されたのみで、主力装備にはなりませんでした。また、性能面でもロシア製AK系小銃に劣ると見なされていました。

2003年のイラク戦争で、アメリカ軍がアル・カーディシーヤ機関の工場を占拠し、タブクの製造は停止しました。その後、工場は略奪と火災に遭い、タブクは非合法市場に流出し、各地のテロ組織や私兵組織に渡りました。

中東地域以外への流出も確認されており、2014年にはアメリカ海兵隊員がタブクを密輸入した罪で逮捕されています。

特徴

タブクはM70B1を基にしているため、外見上の大きな違いはありません。M70の特徴である3つの冷却孔を持つ前床や黒い樹脂製銃把も受け継がれています。ただし、銃身は耐久性を高めるクロムメッキ加工が省略されています。

タブクとM70B1の最も明確な違いは刻印です。タブクには、「Tabuk」「Cal.7.62x39mm」の文字、ピラミッドとバビロンのライオンを組み合わせた意匠、アラビア語の文字が刻印されています。また、安全装置の状態を示す刻印もアラビア文字に置き換えられています。

初期のタブクは良好な仕上がりでしたが、紛争の激化に伴い品質が低下しました。

製品の種類

固定銃床型: M70B1に準じた仕様です。1989年に設計変更が加えられ、小銃擲弾用照準器などが廃止されました。
折畳銃床型: M70AB2と同等の下方回転式の折畳銃床を備えています。
短縮型: 短銃身化されたカービンで、「ベビー・タブク」と呼ばれることもあります。下方回転式の折畳銃床を採用しています。
狙撃型: 長い銃身と肉抜きされた銃床を備え、全自動射撃機能を廃した狙撃銃です。7.62x39mm弾を使用し、市街戦で効果を発揮しました。

アメリカ製レプリカ

アメリカのトゥー・リバーズ・アームズがタブクのレプリカを製造・販売しています。全自動射撃機能はありませんが、外見上の特徴は忠実に再現されています。

運用地域

イラク
南クルディスタン
シリア
マリ

タブクは、イラク軍や民兵組織、テロ組織などによって使用されました。マリでは、タブクの刻印が削り取られたものが発見されています。

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