ツァスタバ M70

ツァスタバ M70：ユーゴスラビア生まれのAKバリアント

ツァスタバ M70は、1960年代にユーゴスラビア（現在のセルビア）のツァスタバ・アームズ社が、AK-47をリバースエンジニアリングして開発したアサルトライフルです。「ザスタヴァ」または「ザスタバ」という発音の方が原音に近く、M70という名で知られています。

開発の背景

1950年代、ユーゴスラビアはソ連との関係が悪化し、独自の自動小銃開発を迫られました。1959年、アルバニア兵がAK-47を持って亡命してきたことを機に、ツァスタバ・アームズ社はAK-47のリバースエンジニアリングを開始。試作品製造後、ソ連の援助国からAK-47初期型を入手し、開発を加速させました。1964年に初期生産が始まり、1970年にM70として制式採用されました。

M70の特徴

M70はAK-47と類似していますが、独自の改良が施されており、外見から容易に区別できます。

ライフルグレネード照準器: 銃身とガスピストンシリンダーの間に、起倒式ライフルグレネード照準器が設けられています。照準器を引き起こすと発射ガスが遮断され、グレネード発射時の安全性を高めます。
ハンドガード: AK-47より長く、冷却孔が3つあります。他国のAKとの互換性はありません。
銃床: 木製固定銃床と金属製折り畳み銃床があり、AK-47に似た曲銃床です。木製銃床は大型で、クリーニングキット収納スペースがなく、バットプレートはゴム製です。
木材: 合板ではなくブナの単材を使用しています。
レシーバー: 初期型は削り出し加工でしたが、後にプレス加工に変更。プレス加工型はレシーバーの厚みが1.5mmに強化され、銃身取り付け部も強化されています。
ダストカバー: レシーバー後部のボタンで固定する機構があり、ライフルグレネード発射時の脱落を防ぎます。
ピストルグリップ: 黒色プラスチック製で、右手の親指の付け根にフィットするよう成形されています。
スリング: バックルの形状と取り付け方法が、ソ連製AKとは異なります。
夜間サイト: フロントサイトとリアサイトに折り畳み式の夜間サイトを装備しています。
ボルトストップ: 初期生産型にはボルトストップ機能がありましたが、後に省略されました。
ホールドオープン: ボルトストップ省略後、マガジンフォロアがボルトを後退位置で保持する簡易的なホールドオープン機能が搭載されました。
マガジン: AK-47 II型に似た金属製ですが、下部のリブが短いため識別可能です。

実戦での活躍

M70はユーゴスラビア人民軍や郷土防衛隊に広く配備され、ユーゴスラビア紛争で使用されました。紛争激化の一因となり、現在も旧ユーゴスラビア構成国で使用されています。スロベニア、クロアチア、セルビアでは、それぞれF2000S、VHS、ツァスタバ M21への更新が進められています。

1980年代、ユーゴスラビアはイラクにM70の製造ライセンスを売却。イラクではタブク（Tabuk）の名でM70B1およびM70AB2が生産され、イラン・イラク戦争、湾岸戦争、イラク戦争で使用されました。

バリエーション

M70: 削り出しレシーバーと固定木製銃床を備えた最初の量産モデルです。
M70A: M70の銃床をAKMSのような折り畳み銃床に変更したモデルです。
M70B1: レシーバーをプレス加工に変更したモデルです。
M70B1N: M70B1にサイドレールを追加し、照準器や暗視装置を取り付け可能にしたモデルです。
M70AB2: M70B1の銃床を折り畳み銃床に変更したモデルです。
M70AB2N: M70AB2にサイドレールを追加したモデルです。
M70B3/AB3: グレネード投射機能を省略し、BGP40 M70グレネードランチャーを装着するモデルです。

ツァスタバ M70