タマシギ

タマシギ（珠鷸）について

タマシギ（学名: Rostratula benghalensis）は、チドリ目に属するタマシギ科に分類される小型の鳥です。この科にはわずか1属2種が含まれています。また、タマシギはインドや東南アジア、中国、アフリカ、オーストラリアに幅広く分布しており、日本では本州中部以南に留鳥として生息しています。しかし、近年は生息数が減少傾向にありつつも、新たに宮城県や山形県での繁殖が確認されています。一部の個体は冬季に南へ渡ることもあります。

形態

タマシギの体長は約23〜26 cmで、メスのほうがわずかに大きいのが特徴です。オスとメスは目のまわりに勾玉模様のアイリングを持ち、胸には細い模様が入っています。腹は白色で、首が太く短いためずんぐりした印象を与えます。興味深い点は、通常の鳥類とは逆にメスの方が鮮やかな羽色をしています。メスはのどに赤褐色を持ち、勾玉模様や胸の模様は白色で目立ちます。一方オスは地味な灰緑色で、黄褐色のまだら模様があり、全体的な色彩はメスよりも控えめです。

生態

タマシギは水田や湿地、河川の岸などの淡水の水辺に生息しています。非繁殖期には小さな群れを形成して過ごす傾向があり、主に夜行性であるため、日暮れや夜明けに積極的に行動します。餌を探す際には、歩き回るよりもじっとして様子をうかがうことが多く、危険を感じると地面に伏せるか水中に潜ります。また、食性は動物食であり、水生昆虫や小型の軟体動物、環形動物などを捕食します。嘴を使って浅瀬を探ることで獲物を見つけます。

繁殖

タマシギの繁殖形態は、他の鳥類とは異なり、一妻多夫制で知られています。日本における繁殖期は4月から10月にかけてで、この時期になるとメスの嘴が赤色に変化し、オスへの求愛行動を開始します。オスは水辺に近い地上に巣を作り、通常3～4個の卵を産卵するため、繁殖はオスが担います。メスは卵を産んだ後、その巣を離れ他のオスと交尾をすることで、子孫を残す確率を高めていると考えられています。

タマシギの雛は早成性であり、孵化後すぐに親を追って歩き出します。育雛には約40〜70日かかるとされています。

人間との関係

近年の湿田や沼地の減少により、タマシギの生息数は減少しています。そのため、環境省のレッドリストでは絶滅危惧II類（VU）に指定されています。この生息環境の保護が、タマシギを守るためには重要です。

このようにタマシギは水辺に生息し、独特な繁殖戦略を持ちながらも、環境の変化に影響を受けている鳥類として、今後の保護活動が期待されています。

もう一度検索