タラスコ族

タラスコ族：ミチョアカン州の山岳地帯に生きる人々

メキシコ南西部、ミチョアカン州の森林に覆われた山岳地帯に暮らすタラスコ族（プレペチャ族）は、独自の歴史と文化を誇る民族です。彼らはパツクアロ湖の東からロスレイエス線付近まで広がる地域に散在する村落を形成し、独自の生活様式を営んでいます。年間降水量が少なく、乾期には深刻な水不足に悩まされる地域であるため、女性たちは遠くの泉や小川から水を運ぶ重要な役割を担っています。

歴史：タラスコ帝国とスペイン植民地化

14世紀には、タラスコ族はパツクアロ湖畔にタラスコ帝国を築き上げました。アステカ帝国と対抗しながら勢力を拡大しますが、16世紀初頭、エルナン・コルテスの率いるスペイン軍の侵略を受け、帝国は崩壊します。スペイン人の略奪と征服は、タラスコ文明に壊滅的な打撃を与えました。

その後、タラスコ族はミチョアカンの山岳地帯へと逃れ、スペイン人との接触を避けて暮らしました。しかし、スペイン征服から10年後、フランシスコ会の宣教師バスコ・デ・キローガが山岳地帯に現れ、キリスト教の布教活動を始めました。キローガは、タラスコ族の文化・生活に理解を示し、町や村の建設、芸術や工芸の復興にも貢献したと言われています。

生活：農業と伝統漁法

タラスコ族の主食はトウモロコシです。農民たちは、限られた土地でトウモロコシ、トウガラシ、豆類、カボチャなどを栽培し、生活を支えています。彼らは、1日に1リットル程度のトウモロコシを小さなトルティーヤにして食べています。

漁業も重要な生業の一つです。タラスコの漁師たちは、マツの木をくり抜いて作った丸木舟を使い、マリポーサと呼ばれる大きなタモ網で魚を捕獲します。獲れた魚は、食料として消費されるだけでなく、市場で売買され、現金収入源となります。家畜飼育も盛んで、牛、羊、鶏、豚などを飼育する家族もいますが、多くの家族では、鶏数羽と豚1頭程度を飼うのが一般的です。農作業は共同で行われることが多く、村では共同で馬や牛を所有し、耕作に利用しています。

文化：伝統衣装と工芸品

タラスコ族の伝統衣装は、メキシコ他の地域とは異なる特徴を持っています。特に貧しい村落では、男女ともにソンブレロをかぶり、毛織の肩掛けを着用します。女性はさらにショール、刺繍入りのブラウス、濃青色または黒のスカートを身に着けるなど、独特のファッション文化があります。

タラスコ族の工芸品は、メキシコ国内外で高い評価を得ています。特にパラチョ村で作られるギターは、メキシコシティやアメリカ、ヨーロッパなどでも珍重されています。伝統的な技法を受け継ぎ、高品質な工芸品を作り続けることで、タラスコ族は経済的にも文化的な発展を遂げてきました。

現代：変化と伝統の継承

現代のタラスコ族は、伝統的な生活様式を維持しながらも、外部との交流を通して変化を遂げています。農地改革や市場経済への参加など、外部からの影響を受けながらも、独自の文化と伝統を守り続けています。彼らの生業や文化は、ミチョアカン州の山岳地帯という厳しい自然環境の中で培われ、現在も脈々と受け継がれています。タラスコ族の文化は、メキシコの多様な文化を象徴する貴重な存在であり、今後もその文化の保存と発展が期待されます。

もう一度検索