タラス会盟

タラス会盟について

タラス会盟は、1269年にオゴデイ・ウルスのカイドゥ、チャガタイ・ウルスのバラク、ジョチ・ウルスのベルケチェルがタラスとガンジャクの草原で開催した重要な会議です。この会議の目的は、中央アジアの権益を巡る抗争を解決することであり、カイドゥとバラクの間で進行中だった争いを収束させるためのものとなりました。関係者の間で権益を分配することで講和が成立したのです。

以前は、この会議でカイドゥが正式にハンに推戴されたという見解があり、さらに元朝（大元ウルス）への宣戦布告があったともされていましたが、近年の研究ではこの説は否定されています。実際のところ、この会盟は主にカイドゥとバラクの権益を調整する場となりました。

背景

カイドゥは、第2代モンゴル帝国皇帝オゴデイの孫であり、内戦の結果としての武力抗争により1265年から叛乱を起こしていました。これに対し、クビライは叛乱討伐のためにさまざまな対策を講じました。具体的には、自身の子ノムガンを叛乱討伐軍として派遣し、バラクをチャガタイ・ウルスへ送り込んでカイドゥに対抗させました。しかし、バラクはクビライの指令を無視し、独自に中央アジアの経営を始めました。

その結果、カイドゥとバラクの間には競争が生まれ、数度の戦闘を経た後、カイドゥが援軍を得ることに成功し、バラクを破りました。これを受けてバラクは一時的に逃亡して地方での略奪活動を行ったが、カイドゥはこのままでは中央アジアが荒廃することを懸念し、講和に向けた対話を提案しました。バラクもこの提案に応じたため、タラス会盟の開催が実現しました。

会盟の内容

タラス会盟の詳細については、歴史書『集史』が最も詳しく記載しています。この会談では、以下のような合意が成されました：

1. 各王が互いに友好関係を誓う。
2. 中央アジアにおける主要地域の支配権とその収入の分配についての合意。
3. 地域の都市には近づかないことを決め、山地と原野に居住することを規定。
4. バラクはフレグ・ウルスに侵入して土地を奪うことが許可され、その援助をカイドゥが行うこと。

バラクに最も有利な権益分割が行われた背景には、彼の中央アジアにおける略奪活動を容認し、これをやめさせる意図が含まれていると考えられます。実際、バラクは会議の冒頭で自らの境遇について不満を述べ、カイドゥはこれを受け入れました。

会盟後の展開

会盟後、バラクは中央アジアにおける勢力圏を確定し、フレグ・ウルスへの進出を開始しました。しかし、フレグ・ウルスのアバカに迎撃され、バラクは大敗を喫し、逃亡中に死去したとも伝えられています。このため、チャガタイ・ウルスは混乱状態に陥りました。この状況を受けてカイドゥはタラス会盟を無視し、中央アジアへの侵攻を開始しました。

また、カイドゥが中央アジアにおいて勢力を強化する中でも、彼の支配は常に安泰ではありませんでした。カイドゥに忠実でなかったチャガタイ系諸王との対立が続き、結果的には地域全体が戦乱に見舞われることとなりました。

最終的に、カイドゥは1282年にオゴデイ・ウルス、チャガタイ・ウルス、アリクブケ・ウルスの統合を果たし、これにより「カイドゥの国」の実質的な成立が見られました。これに伴い、彼は中央アジアの復興プロジェクトを推進することで、その地域を完全に掌握するに至りました。タラス会盟は、その後の流れにおいて重要な転機となったのです。

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