ノムガン

ノムガンについての詳細

ノムガン（Nomuγan、生没年不詳）は、モンゴル帝国、大元ウルスに所属する皇族であり、世祖クビライの皇后であるチャブイとの間に生まれた4人の嫡子の中で最も若い子として知られています。彼の名前は、中国語の史書『元史』では那木罕と表記され、ペルシア語の資料では نوموغان (Nūmūghān) と記されています。ノムガンはモンゴルの末子相続制度に基づき、両親の財産を多く引き継ぐ権利を持っており、クビライの優れた後継者候補として期待されていました。

ノムガンは、至元3年（1266年）に北平王の称号を授与され、クビライの北方における代行者として軍を指揮しました。彼はモンゴル高原に駐留し、遊牧民軍団の指揮を執りつつ、重要な祭祀を管理する役割を担いました。ノムガンは特にアルタイ山脈の西側に存在するオゴデイ家およびチャガタイ家のウルスに対しての軍事的圧力を強化することが目的でした。

彼の軍事遠征は至元12年（1275年）に始まり、中央アジアへの進出が計画されました。ノムガンはモンゴル高原の王族たちを指揮し、チャガタイ家の混乱を利用してその本拠地であるイリ川渓谷へ侵攻しました。彼は中心都市であるアルマリクに兵を駐留させましたが、1276年の夏に従軍していた従兄弟のシリギが反乱を起こし、軍が崩壊する事態となります。結果として、ノムガンとその上司であるアントンは捕らえられ、アルマリクに駐留する北平王軍は壊滅的な打撃を受けました。

その後、ノムガンはシリギによってジョチ・ウルスに引き渡され、中央アジアで囚われの身となることになりました。ジョチ・ウルス側は、彼を受け取ったにも関わらず、シリギへの援助を行わず、クビライに対して反抗することはありませんでした。最終的にシリギの反乱はクビライによって鎮圧されました。

1282年、ノムガンは釈放され、父クビライの元に戻ることができました。帰国後、彼は北安王の称号を再び得て、モンゴル高原に駐留することになりましたが、彼の軍事的活動は中央から派遣されたバヤンの軍隊に取って代わられ、自身はカイドゥとの戦いでほとんど活躍することなく短い在任期間を経て死去しました。ノムガンには子がなく、北安王家は彼の死によって継承されることなく断絶。さらに、彼の軍隊は1291年に甥のカマラに引き継がれました。

ノムガンの生涯は、モンゴル帝国における権力闘争や家族関係の複雑さを浮き彫りにします。彼の人生を通して、帝国の政治的力学や動乱の時代の影響がどのように展開したのかを理解するうえで、重要な事例となっています。

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