タルトゥース海軍補給処

タルトゥース海軍補給処：地中海におけるロシア海軍の戦略拠点

タルトゥース海軍補給処は、シリアのアラビア海岸に位置するタルトゥース港の北端に設置された、ロシア海軍の重要な補給施設です。正式名称は第720物的技術保障拠点ですが、一般的にはタルトゥース海軍基地、もしくは単にタルトゥース施設と呼ばれることも多く、ロシア海軍の地中海における唯一の活動拠点として知られています。

概要と機能

この施設は、地中海に展開するロシア海軍艦艇にとって、不可欠な補給と修理の拠点としての役割を果たしています。タルトゥース補給処の存在により、黒海艦隊所属の艦艇は、トルコ海峡を通過することなく、地中海での活動や訓練を継続することが可能になります。2002年にベトナム・カムラン湾の施設から撤退して以降、タルトゥースはロシア海軍の唯一の海外拠点となっています。

現在の施設は、中型艦艇4隻程度の収容能力を有していますが、大型艦艇であるフリゲート艦や駆逐艦の完全な収容は困難です。しかし、これらの艦艇に対する限られた範囲での補給作業は可能であるとされています。

歴史

タルトゥース海軍施設の起源は冷戦期に遡ります。1971年にソ連とシリアの間で締結された合意に基づき、ソ連海軍の地中海における活動を支援する目的で設立されました。これは、アメリカ海軍第6艦隊に対抗する戦略的拠点としての役割も担っていました。

1970年代には、エジプトやベトナムなどにも同様の補給施設が存在しましたが、地政学的状況の変化に伴い、これらの施設は閉鎖され、その機能はタルトゥース施設に集約されました。1984年には、第720物的技術保障拠点として改修・拡張され、機能が強化されました。ソ連崩壊後も、規模縮小はあったものの、ロシア海軍による継続的な使用が維持されています。

法的地位と今後の展望

2017年、ロシアとシリアは49年間の無償使用と施設拡張に関する合意に達しました。この合意は、ロシアがタルトゥース施設を自由に使用し、核搭載艦艇を含む最大11隻の艦艇を常駐させることを認めています。また、施設のロシア人職員と物資に対するシリア側の管轄からの免責も規定されています。

近年は、ロシア企業による港湾施設の使用に関する合意も締結されつつあると報道されており、ロシア海軍のタルトゥースにおける存在感は、今後も継続、強化されるものと見込まれます。現在、黒海艦隊隷下の地中海常設作戦部隊が派遣され、タルトゥース補給処はその補給拠点として重要な役割を果たしています。

関連項目

* フメイミム空軍基地：ラタキア近郊に所在するロシア空軍基地。シリア内戦におけるロシアの軍事介入において重要な役割を果たしています。

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