フメイミム空軍基地

フメイミム空軍基地：シリア内戦とロシアの軍事戦略における要衝

シリア・ラタキア市南東に位置するフメイミム空軍基地は、ロシア空軍にとってシリアにおける主要な軍事拠点です。バースィル・アル＝アサド国際空港に隣接し、一部施設を共有していますが、基地の運用はロシア軍関係者のみが行っています。

シリア内戦における役割

2015年半ば、シリア内戦におけるアサド政権支援のため、ロシアは軍事介入を開始しました。フメイミム空軍基地は、この介入の中核を担う戦略拠点として建設されました。反政府勢力やISILに対する空爆作戦の中心基地となり、数千回に及ぶ空爆任務を実行しました。基地の存在は、シリア内戦の激化を懸念するアメリカ合衆国にも確認され、国際的な緊張を高める要因となりました。

2015年11月には、この基地を離陸したロシア軍のSu-24爆撃機がトルコ軍機によって撃墜される事件が発生。この事件を受け、基地の防空強化が急務となり、S-400地対空ミサイルシステムが配備されました。NATOは、こうした防空システムの配備を事実上の飛行禁止区域設定と見なしました。

2016年3月、プーチン大統領によるロシア軍のシリアからの部分撤退宣言後も、フメイミム空軍基地は重要な拠点として活動を継続しました。アレッポ奪還やデリゾール解放作戦など、シリア内戦における主要な軍事作戦で重要な役割を果たしました。2017年12月には、プーチン大統領がアサド大統領と共に基地を電撃訪問し、ロシアのシリアにおける軍事介入がほぼ終了したと発表しましたが、同基地への駐留は継続されました。

基地施設と運用

フメイミム空軍基地は、ゼロから建設された近代的な軍事施設です。冷房付きの兵舎、管制塔、拡張された滑走路、弾薬庫、駐機場、給油施設などが整備されています。補給物資はロシア本土からの空輸、またはタルトゥース港からの海上輸送によって供給されています。

基地では、An-124やIl-76といった大型輸送機に加え、Su-24、Su-25、Su-34、Su-30SM、Su-35Sなど約50機に及ぶ戦闘機・攻撃機が運用されています。一時的に最新鋭のSu-57戦闘機の配備も確認されました。航空宇宙軍が主体ですが、T-90A戦車、BTR-82装甲兵員輸送車、Pantsir-S1防空システム、S-400地対空ミサイル、Mi-24攻撃ヘリコプター、Mi-8輸送ヘリコプターなど、陸上部隊や防空部隊も配備され、基地の警備と運用を担っています。

トルコ軍機による爆撃機撃墜事件以降、基地にはSu-35戦闘機やTu-21R電子偵察機なども配備されました。2018年には、A-50早期警戒管制機も配備され、情報収集能力が強化されました。

外交の場としての活用

フメイミム空軍基地は、軍事拠点としての役割に加え、外交の場としても利用されています。プーチン大統領をはじめとするロシア高官のシリア訪問の拠点となるほか、プーチン大統領とアサド大統領の会談や、アサド政権とクルド人勢力との交渉などが行われた記録があります。

まとめ

フメイミム空軍基地は、シリア内戦におけるロシアの軍事介入を象徴する存在です。軍事拠点としての機能に加え、外交交渉の場としての役割も担い、シリア情勢に大きな影響を与え続けています。その存在は、今後も国際社会の注目を集め続けるでしょう。

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