タンガの戦い

タンガの戦い（1914年 11月3日～5日）は、第一次世界大戦中にイギリス領インド軍がドイツ領東アフリカ（現在のタンザニア、ルワンダ、ブルンジの一部）のタンガに上陸を試みたものの、失敗に終わった戦いです。「ハチの戦い」とも呼ばれるこの戦いは、大戦中アフリカで最初に発生した本格的な戦闘として知られています。

背景

タンガは、イギリス領東アフリカ（現在のケニア）との国境からわずか80kmの距離にあり、船舶の往来が盛んな港湾都市であり、キリマンジャロへと続く重要なウサンバラ鉄道の起点でもありました。第一次世界大戦勃発後、イギリス帝国はアフリカのドイツ植民地を海上封鎖し、ドイツ領東アフリカに対して小規模な作戦を開始しました。

当初、イギリス軍はタンガへの艦砲射撃を計画していましたが、1914年 8月17日にタンガが攻撃しない代わりに砲撃を行わないという協定が結ばれたため、この計画は破棄されました。しかし、イギリスはこの協定を破り、アーサー・エイトケン少将が指揮する8,000名のイギリス領インド軍部隊「B遠征軍」を派遣することを決定しました。エイトケンはアフリカの黒人兵を過小評価し、作戦の成功に自信を持っていました。タンガに向かう途中、モンバサに立ち寄った際、王立アフリカ小銃隊のグレアム中佐が協力を申し出ましたが、エイトケンはこれを拒否しました。グレアムはドイツ軍のアスカリ（現地兵）を甘く見てはいけないと警告しましたが、エイトケンはそれを受け入れず、クリスマスまでには作戦は完了すると語りました。

B遠征軍のうち、ノースランカシャー連隊とグルカ兵は比較的訓練されていましたが、他のインド兵部隊は訓練不足で装備も貧弱でした。ボンベイからモンバサへの航海で兵士の士気は低下していました。モンバサ停泊中に上陸許可が提案されましたが、ドイツ軍に気づかれることを恐れてエイトケンは拒否しました。しかし、ドイツ軍はすでにイギリス軍の遠征を察知していました。ボンベイ港の木箱に遠征先を示す札が貼られていたり、イギリスと東アフリカの報道や平文通信により、遠征軍の到着は筒抜けだったのです。ドイツ軍のパウル・フォン・レットウ＝フォルベック大佐は、タンガ守備隊に増援を送り、最終的に約1,000名規模にしました。

上陸

11月2日、イギリス軍巡洋艦フォックスがタンガ港に到着し、イギリス軍は協定破棄を通告して上陸作戦を開始しました。しかし、作戦は最初から困難に直面しました。エイトケンは、レットウ＝フォルベックがタンガ港に機雷を敷設していると誤解し、11月3日にタンガから約5km南の地点に上陸しました。この上陸地点は、マングローブが生い茂る沼沢地で、ヒルや水蛇、蚊やツェツェバエが多く生息する場所でした。事前の偵察も行われていませんでした。

11月4日、エイトケンは部隊に街への進軍を命じましたが、これもまた事前の偵察なしに行われました。8対1の兵力差があったにも関わらず、レットウ＝フォルベックは反撃を開始しました。当初、イギリス軍は抵抗なく進軍していましたが、タンガ守備隊は待ち伏せをしていました。ドイツ人将校のラッパの合図とともに250名のアスカリが急襲し、インド兵は逃走、イギリス人士官は戦死しました。逃げたインド兵は上陸地点の海岸まで戻ってしまいました。これを見たエイトケンは、ノースランカシャー連隊とグルカ兵を中心に第二次攻撃を指示しました。ドイツ軍は強固な陣地と通信網を築いており、アスカリ狙撃兵が森や畑の中からイギリス軍を狙撃して苦しめました。ノースランカシャー連隊とグルカ兵はタンガ市内のいくつかの建物と病院を占拠し、病院の屋上にユニオンジャックを掲げました。

ハチとの戦い

午後には、戦闘はジャングルでの小競り合いへと移行し、さらに怒り狂ったハチの大群との戦いも始まりました。アフリカのハチは大型で攻撃的で、兵士たちの騒音や射撃の振動に刺激され、イギリス軍に襲いかかりました。ハチに刺された兵士たちは海岸に逃げ出し、ハチの群れによってパニックが広がりました。イギリス軍兵士は海にまで逃げ込みました。ドイツ軍のアスカリもハチに刺されましたが、主な攻撃の矛先はイギリス軍に向けられ、数百箇所も刺されて意識不明になる兵もいました。激怒したエイトケンは艦砲射撃を命じましたが、発射された砲弾がイギリス軍が占拠していた病院に落下したため、中止されました。その他にも、味方の誤射によりイギリス軍の被害はドイツ軍によるものよりも大きくなりました。

イギリス軍の退却

イギリス軍は800名以上の死傷者を出し、11月5日に撤退しました。退却の際に、小銃、機関銃、60万発以上の弾薬を置き去りにし、レットウ＝フォルベックはこれらを鹵獲しました。レットウ＝フォルベックは、白旗の下でエイトケンと会見し、記録や意見を交換しました。また、インド兵の負傷者の手当てもドイツ人医師に指示しました。

パウル・フォン・レットウ＝フォルベックはこの戦功により少将に昇進しました。

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