タングステン作戦

タングステン作戦

タングステン作戦（Operation Tungsten）は、イギリス軍が1944年3月末から4月初めにかけて実施した、ドイツ戦艦「ティルピッツ」への攻撃作戦です。この作戦には空母「ヴィクトリアス」や「フューリアス」、4隻の護衛空母が参加し、ノルウェーのコーフィヨルドで航空攻撃を行いました。結果的に「ティルピッツ」には損害を与えましたが、撃沈には至りませんでした。

背景

ドイツ戦艦「ティルピッツ」は1941年に就役し、連合国側にとって大きな脅威となりました。特に「ティルピッツ」の配備は、ノルウェー経由のソ連船団に対する攻撃を意図しており、連合国の輸送活動に対する障害となっていました。この艦船が運用される限り、イギリス本国艦隊に対する圧力を強め、その結果、輸送船団の安全な運行を確保するために多くの艦艇が必要となりました。

イギリス軍は1942年から1943年にかけて「ティルピッツ」の攻撃を試みましたが、大半は失敗に終わりました。しかし、1943年9月にはX艇による攻撃で「ティルピッツ」に大きな損害を与えることに成功し、長期間の作戦不能に追い込みました。この状況を踏まえて、イギリス海軍は「ティルピッツ」が修理を終えた際の脅威に対する対策を急ぐ必要がありました。

準備

コーフィヨルドでの攻撃計画は1943年12月に始まり、本国艦隊の指揮官であるフレーザー中将は作戦計画に対して楽観的ではありませんでした。最終的に、攻撃作戦はタングステン作戦と名付けられ、1944年3月後半に実施されることが決定しました。

プロジェクトの核は、艦隊航空隊のフェアリー・バラクーダによる急降下爆撃でした。攻撃隊はそれぞれバラクーダ21機と護衛の戦闘機を40機編成し、対空火力を補助するための戦闘機部隊も必要とされました。

訓練は1944年2月から開始され、多くの航空兵が経験不足であったため、徹底的な準備が行われました。訓練地はエリボル湾で、急峻な丘に囲まれた地域で「ティルピッツ」周辺の条件に似せた環境で行われました。加えて、連合国側は「ティルピッツ」の動向を監視し、進捗情報を得る努力を続けていました。

攻撃の実施

1944年4月3日、タングステン作戦を実行するため、攻撃隊はコーフィヨルドへ向けて発進しました。最初の攻撃隊は「ヴィクトリアス」と「フューリアス」から発進し、早朝にコーフィヨルドに到達しました。

攻撃は想定通りに進行し、「ティルピッツ」周辺の防空施設に対する機銃掃射から始まりました。その後、バラクーダによる急降下爆撃が行われ、「ティルピッツ」には10発の爆弾が命中しました。攻撃中、多くの乗員が負傷し、艦の被害も相当なものでしたが、撃沈には至りませんでした。

第2波の攻撃隊も引き続き出撃し、再度「ティルピッツ」を攻撃しましたが、同様に大きな損害を与えることはできませんでした。最終的に、イギリス側の航空兵は数名の死者を出しつつも作戦を終え、スカパ・フローへ帰還しました。

結果とその後

タングステン作戦の結果、「ティルピッツ」は一定の損害を受けましたが、致命的な打撃には至らず、ドイツ側は艦艇の修理を迫られました。修理は6月中旬に完了し、その後も「ティルピッツ」は連合国側に対する潜在的な脅威であり続けることとなります。イギリス側のその後の計画においては、悪天候やその他の要因によって新たな攻撃が中止されることが相次ぎましたが、最終的には1944年7月に次の攻撃が実施されたのです。

タングステン作戦はイギリス軍にとって意義深いものであり、その詳細な計画と準備が功を奏したことは評価されましたが、最終的な結果はイギリス側の期待に見合うものではありませんでした。

もう一度検索