タンジブルユーザインタフェース

タンジブルユーザインタフェース

タンジブルユーザインタフェース（TUI）またはタンジブル・ビットは、マサチューセッツ工科大学の教授である石井裕によって提案された新しい形式のユーザインタフェースです。このインタフェースは、従来のコンピュータによるやり取りの枠を超え、無形の情報を触れる形に変え、ユーザーがより直感的に操作できるように設計されています。

概要

従来のコンピュータインタフェースでは、例えば複雑な数式や化学式を入力する際に、キーボードを使う必要があり、そのために多くの時間を消費します。これに対して、タンジブルユーザインタフェースは、物理的なオブジェクトや空間を利用して、情報を直接触れることができる環境を提供します。このインタフェースにより、ユーザーはコンピュータとの距離をグッと近づけることができ、インタラクションの新たな可能性が広がります。

往々にして、現行のインターフェースでは一度に複数の人が同時に作業を行うことが難しい状況がありますが、タンジブルユーザインタフェースはこうした制約を取り払い、共同作業を容易にし、多様な対話が可能となります。

実例

タンジブルユーザインタフェースの具体的な例としては、いくつかの革新的なプロジェクトがあります。

クリアボード

タンジブルユーザインタフェースの初期にあたる例がクリアボードです。この透明な板の上に文字や絵を描くことで、同じ板を使っている他の場所にもその情報を表示することができるシステムです。電話や電子メールに比べ、視覚的な表現が豊かであり、FAXよりも直感的に使用できることから注目を集めました。

タンジブルIPネットワークデザイナー

このシステムでは、ネットワーク構成図の上に物理的な駒を置き、それを動かすことでルーターやスイッチなどの通信機器を操作できます。また、ボリュームのように駒を回転させることで回線速度を調整し、予想されるトラフィックをシミュレーションすることが可能です。NTTコムウェアにより開発されたこのシステムは、OPNET Technologies社のOPNET Modelerをコアエンジンとして利用しています。

タンジブル防災シミュレータ

このシミュレータでは、災害発生を想定し、地図上に駒を置いたり位置を変更したりすることで避難所の設置場所や災害の規模をシミュレーションできます。実際の災害時における避難経路の検討や対策を行うことができます。

ミュージックボトル

このデバイスは、特定の瓶を台座の上に置くことで、その蓋を開けると録音された音楽が再生される仕組みです。各瓶ごとに収録内容を変更でき、複数の楽器を同時に演奏させることも可能です。このように、使用する人々が物理的に動かすことで、音楽体験をインタラクティブに楽しむことができます。

まとめ

タンジブルユーザインタフェースは、従来のコンピュータインタフェースが抱える問題点を解決するための可能性を秘めています。情報を触れることができる物理的な形に置き換えることで、ユーザー自身が直感的に操作でき、共同作業も容易になる。この革新的な技術は、今後の情報技術やインタラクションの進化を促進していくことでしょう。

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