テート・ブリテン

テート・ブリテン：イギリス絵画の殿堂

ロンドンのテムズ川南岸、ミルバンク地区に建つテート・ブリテンは、イギリスを代表する国立美術館です。テート・モダンなどと共に、国立美術館ネットワーク「テート」を構成する重要な美術館の一つとして、世界中から多くの来館者を集めています。

歴史と変遷

テート・ブリテンの歴史は1897年に遡ります。ミルバンク刑務所の跡地に建設され、当初はナショナル・ギャラリーの分館として、イギリス絵画の展示に特化していました。その後、近代・現代美術も扱うようになり、1955年には独立した「テート・ギャラリー」として生まれ変わります。2000年、近現代美術専門のテート・モダンがサウスバンクに開館すると、テート・ギャラリーはイギリス美術専門の美術館として再編、大規模な改修を経て2001年に「テート・ブリテン」と改称し、新たなスタートを切りました。

充実したコレクション

テート・ブリテンは、16世紀のテューダー朝美術から現代までのイギリス絵画を、時代順に展示するという特徴を持っています。館内には、ウィリアム・ブレイク、ジョン・コンスタブル、トマス・ゲインズバラといったイギリス絵画史を彩る巨匠たちの作品が数多く収蔵されています。特に、ウィリアム・ホガース、ラファエル前派の画家たち（ダンテ・ゲイブリエル・ロセッティ、ジョン・エヴァレット・ミレー、エドワード・バーン＝ジョーンズら）の作品群は必見です。

ミレーの『オフィーリア』やウォーターハウスの『シャーロットの女』といった、テートを代表する名画もこの美術館で鑑賞できます。また、ターナーが寄贈した膨大な作品群は、専用のクロア・ギャラリーに常設展示され、その画業の軌跡を辿ることができます。20世紀半ば以降のデイヴィッド・ホックニー、ピーター・ブレイク、フランシス・ベーコンといった現代美術家の作品も展示され、イギリス美術の幅広い歴史と多様性を体感できます。さらに、現代アーティスト、トレイシー・エミンなどの作品も収蔵されています。

来館者への取り組み

テート・ブリテンは、より多くの人々に芸術を届けるため、様々な取り組みを行っています。「Late at Tate」と題したイベントでは、毎月第一金曜日に夜10時まで開館時間を延長し、特別展の入場料を割引、ライブ音楽やパフォーマンスアートなどを開催。美術館になじみのない人々にも親しみやすい空間を提供しています。

毎年開催される「ターナー賞展」も注目すべき催しです。50歳以下のイギリス人アーティスト4人を審査員が選出し、その中からターナー賞受賞者を決定する展覧会で、現代美術の動向を知る上で重要な機会となっています。

テート・モダンとの間には、テムズ川を高速船で結ぶ「Tate to Tate service」が運行しており、両館を効率的に巡ることができます。

主な収蔵作品

テート・ブリテンには、数々の名画が収蔵されています。その一部をご紹介しましょう。

ウィリアム・ホガース『自画像』(1745年)
J.M.W.ターナー『自画像』(1798年頃)
ジョン・エヴァレット・ミレー『オフィーリア』(1852年)
エドワード・バーン＝ジョーンズ『黄金の階段』(1880年)
ウィリアム・ホルマン・ハント『良心の目覚め』(1853年)
ダンテ・ゲイブリエル・ロセッティ『受胎告知』(1850年)
ダンテ・ゲイブリエル・ロセッティ『ベアタ・ベアトリクス』(1861-70年頃)
ジェームズ・アボット・マクニール・ホイッスラー『ノクターン：青と金色－オールド・バターシー・ブリッジ』(1872-73年)

これらの作品以外にも、テート・ブリテンには、イギリス美術の歴史を語る上で欠かせない、貴重な作品が数多く展示されています。ロンドンを訪れた際は、ぜひ足を運んでみてください。

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