ターロ川でフランスのシャルル8世と戦うフランチェスコ2世・ゴンザーガ

ターロ川の戦いを描くティントレットの傑作

ティントレットが1578年から1579年にかけて制作した油彩作品「ターロ川でフランスのシャルル8世と戦うフランチェスコ2世・ゴンザーガ」は、イタリア・ルネサンス期のヴェネツィア派を代表する画家の手による、歴史的な戦いを描いた壮大な作品です。この絵画は、もともとマントヴァのドゥカーレ宮殿のために制作された「ゴンザーガ家の栄光」連作の一部であり、現在はミュンヘンのアルテ・ピナコテークに所蔵されています。

作品の背景

この作品は、1494年7月6日に起こったフォルノーヴォの戦いを題材としています。この戦いは、フランス王シャルル8世率いるフランス軍と、フランチェスコ2世・ゴンザーガが指揮するヴェネツィア共和国・ミラノ公国連合軍の間で繰り広げられました。両軍ともに勝利を主張したものの、実際には決着がつかなかった激戦でした。ティントレットは、この戦いの激しさと、フランチェスコ2世の勇敢な姿を、ダイナミックな筆致で描き出しています。

ヴェネツィア派の特徴

ティントレットの作風は、ヴェネツィア派の特徴を色濃く反映しています。彼の絵画は、色彩の豊かさと、ダイナミックな構図が特徴的です。特に、サン・ロッコ大同信会の絵画作品に見られるような、ドラマチックな表現手法は、この作品にも顕著に見られます。画面全体に広がる、躍動感あふれる人物の描写は、見る者に戦場の臨場感を伝えます。

画面構成と詳細

絵画の中央には、戦場で指揮をとるフランチェスコ2世の姿が描かれています。彼は、画面上部左側で自軍に指示を与え、その背後には太陽をあしらった軍旗が、まるで光輪のように輝いています。この演出は、フランチェスコ2世の勇ましさと、彼の高貴な身分を象徴的に表現しています。戦いの様子は、入り乱れる兵士たちの姿を通して、その激しさが伝わってきます。

歴史的意義

この作品は、単なる歴史画としてだけでなく、ルネサンス期の戦争と、当時の権力者の姿を理解する上で重要な資料となります。また、ティントレットの卓越した画力が、歴史的な出来事を生き生きと描き出している点も、この作品の大きな魅力です。

作品の所蔵と歴史

この絵画は、もともとグリエルモ・ゴンザーガによって、マントヴァのドゥカーレ宮殿のために委嘱されました。その後、おそらくマクシミリアン2世エマヌエル（バイエルン選帝侯）によって購入され、1748年からはシュライスハイム宮殿に所蔵されていました。現在では、ミュンヘンのアルテ・ピナコテークに所蔵されており、一般公開されています。

まとめ

ティントレットの「ターロ川でフランスのシャルル8世と戦うフランチェスコ2世・ゴンザーガ」は、歴史的な戦いを背景に、人間の勇気と、芸術の力を示す傑作です。そのダイナミックな構図と、色彩豊かな表現は、ルネサンス美術の魅力を今に伝えます。この作品は、歴史と芸術の両方に興味を持つ人々にとって、必見の価値があると言えるでしょう。

参考文献
C.H.Beck『アルテ・ピナコテーク　ミュンヘン』、Scala Pulblishers、2002年刊行　ISBN 978-3-406-47456-9

外部リンク
アルテ・ピナコテーク公式サイト、ティントレット『ターロ川でフランスのシャルル8世と戦うフランチェスコ2世・ゴンザーガ』 (英語)

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