ダイダラボッチ (端脚類)

ダイダラボッチ (Alicella gigantea)

概要

ダイダラボッチ（Alicella gigantea）は、深海に生息する特異なヨコエビ類であり、端脚目に属する最大の種です。この生物は単独でAlicella属を形成し、かつてはフトヒゲソコエビ科に分類されていましたが、分類学の進展によりダイダラボッチ科に組み込まれています。

名前の由来

Alicellaという属名は、タイプ標本が採集された調査船「プリンセス・アリス号」に由来しています。この船はモナコ公アルベール1世が所有しており、その妻アリス・エーヌの名前から名付けられました。また、日本語の名前「ダイダラボッチ」は、日本の伝承に登場する巨人の名称にちなむものです。

生息環境

ダイダラボッチは主に太平洋や北大西洋の水深4,000から7,000メートルの暗黒層に生息します。日本においては、小笠原沖での出現が確認されていますが、最も浅い場所では1,720メートルで発見されています。

生態

この種は深海で腐肉食性であり、主に海底に沈んだ有機物を食べています。捕食者にはヨロイダラ（Coryphaenoides armatus）が知られており、また死骸を食べるために海面に浮上することがあるクロアシアホウドリ（Diomedea nigripes）も関与しています。

形態的特徴

ダイダラボッチは驚異的な体長を持ち、一般的には140ミリメートルに達しますが、中には340ミリメートルに達する個体も報告されています。この大きな体は、クサウオ類からの捕食を回避するための適応と考えられています。目は黄色で、固定後は不明瞭になります。体色は淡褐色で 、第1咬脚は単純な形態をしています。

胸脚は各節が細長く、尾肢は槍状に伸び、適応した形状を示しています。大顎は単純で、右側の可動葉は二股に分かれています。第1小顎は内側に多数の剛毛を持ち、また第1腹節の背面はやや隆起していますが、トゲ状にはなっていません。

巨大化のメカニズム

ダイダラボッチは、深海に生息するヨコエビの中でも特に体サイズが大きく、標準的なヨコエビの中で群を抜いています。この種は、第2から第7胸脚に鰓を持ち、特に第5および第6胸脚の鰓には突起が存在します。この構造は、酸素濃度が低い深海において効率的な酸素吸収を可能にするための適応と考えられ、結果的に巨大化に寄与していると考えられます。なお、ゲノムサイズも近縁種に比べ大きく、34.79pg（34.02Gb）と推定され、この大きさが巨大化に影響を与えている可能性があります。

結論

ダイダラボッチは、不思議な生態系と独特の進化の歴史を持つ生物です。その生態や特性は、深海の神秘を探求する私たちに多くの示唆を与えてくれるでしょう。

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