ダイダリオーン

ダイダリオーン

ダイダリオーン（古希: Δαιδαλίων, Daidaliōn）は、古代ギリシャ神話に語られる人物の一人です。明けの明星として知られる神ポースポロスの子であり、英雄ケーユクスを兄弟に持ちます。また、美しい娘キオネーの父としても知られています。伝承によれば、彼は並外れた剛勇を誇り、非常に好戦的な性格を持った人物であったとされています。

娘キオネーの悲劇

ダイダリオーンの人生における重要な出来事は、彼の娘キオネーの物語と深く結びついています。オウィディウスの『変身物語』によれば、キオネーはその類稀なる美しさゆえに、二柱の重要な神々、すなわち伝令神ヘルメースと光明神アポローンから同時に寵愛を受けることになりました。ヘルメースとの間には、後に狡猾な盗賊として名を馳せるアウトリュコスが生まれました。一方、アポローンとの間には、後に優れた音楽家となるピラムモーンが誕生しています。

しかし、キオネーはその美しさを過信し、自らが神々の母であるレトーよりも美しいと公言するなど、傲慢な態度をとるようになりました。この高慢さが、狩猟の女神であるアルテミスの怒りを買い、結局キオネーはアルテミスの放った弓矢によって命を落とすことになります。

深い悲しみと変身

最愛の娘を突然の悲劇によって失ったダイダリオーンは、計り知れないほどの深い悲しみに打ちひしがれました。彼は娘の遺体が火葬される炎の中に自ら身を投じ、後を追おうとしましたが、周囲にいた人々によって必死に引き止められました。しかし、生きる望みを失った彼は、人々から逃れるようにして、聖なる山として知られるパルナッスス山の頂上へと駆け上がりました。そして、その断崖絶壁から身を投げて死を選ぼうとしたのです。

この痛ましい光景を目にした神アポローンは、ダイダリオーンの深い悲しみと絶望を憐れみました。アポローンは、彼が地面に激突する直前に intervention（介入）し、その姿を一羽の鳥へと変えました。それは、敏捷に獲物を狩る猛禽類であるハイタカでした。

ハイタカの起源

神話的な説明によれば、ダイダリオーンがハイタカへと変身した際、彼が人間であった頃の荒々しく攻撃的な気質は、そのまま鳥の性質として引き継がれたとされています。このため、ハイタカの一族は他の鳥類に対して非常に攻撃的であり、狩りにおいてもその獰猛さを示すのだと語り継がれています。ハイタカが他の鳥を追いかける様子は、あたかもダイダリオーンがその悲嘆と怒りをもって獲物を追う姿のようであると解釈されることもあります。

伝承

ダイダリオーンに関するこの物語、特に娘キオネーの死とその後の彼の変身については、古代ローマの詩人オウィディウスがその代表作である『変身物語』の中で詳細に叙述しています。また、ローマの神話学者ヒュギーヌスも、彼の著書『ギリシャ神話集』の中で同様の逸話を記録しており、古代世界において広く知られていた伝承の一つであったことが伺えます。

この物語は、人間の深い悲しみや絶望に対する神々の介入、そして動物の性質の起源を神話的に説明する例として語り継がれています。

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