ダイハツ・コンパーノスパイダー

ダイハツ・コンパーノスパイダー：イタリアンオープンカーの挑戦

ダイハツ工業は、1960年代に個性的なオープンカー「コンパーノスパイダー」を世に送り出しました。ベースとなったのは同社の「コンパーノベルリーナ」。そのルーフを大胆にカットすることで生まれたスパイダーは、1964年開催の東京モーターショーで華々しくデビューを飾ります。翌1965年4月、一般販売が開始されました。

4人乗りオープンカーの設計

コンパーノがフレーム構造を採用していたことで、オープン化に伴う重量増加はわずか35kgの790kgに抑えられました。しかし、幌を収納するためのスペースを確保する必要から、乗車定員は4名に設定されました。これは、単なるセカンドカーとしてだけでなく、ファーストカーとしても多用途に使えることを目指した設計思想の表れと言えるでしょう。

イタリアンデザインとパワフルなエンジン

ダイハツは当時、イタリアンデザインを採用しており、コンパーノスパイダーもその流れを汲む、流麗なシューティングブレークスタイルが特徴です。心臓部には、コンパーノに搭載されていたFC型800ccエンジンをベースに排気量を1000ccに拡大。さらにソレックス製ツインキャブレターの採用により、最高出力65ps、最大トルク7.8kgmという、当時としてはパワフルな性能を実現しました。最高速度は145km/h、0-400m加速は18.5秒という優れた動力性能を誇りました。トランスミッションは4速フロア式MTで、コンパーノに比べてローギアード化され、軽快な走りを可能にしていました。

販売と終焉

1967年4月にはマイナーチェンジが行われ、フロントマスクのデザイン変更、エンジントルクの向上、フロントディスクブレーキの採用など、性能面が強化されました。しかし、東京地区の標準価格は69万5千円と、競合車種のトヨタ・スポーツ800（59万5千円）やホンダS600（56万3千円）に比べて高価でした。この価格の高さが販売台数の伸び悩みを招き、1967年11月にダイハツがトヨタ自動車と業務提携したことを受け、1968年には販売を終了しました。

ドラマへの出演と車名の由来

コンパーノスパイダーは、1965年から1966年にかけて放送されたダイハツ提供のテレビドラマ『バックナンバー333』で主人公愛車として登場しました。このドラマへの起用は、当時の若者層にアピールする上で大きな役割を果たしたと考えられます。

車名の「スパイダー」は、イタリア語で「仲間」「同僚」を意味する言葉に由来しています。この名称には、仲間と共に走ることへの期待が込められていたのかもしれません。コンパーノスパイダーは、短命に終わったモデルではありますが、ダイハツの挑戦と、当時の自動車産業の活況を象徴する一台として、今も多くの自動車ファンに記憶されています。

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