ダイハツ・パイザー

ダイハツ・パイザー：コンパクトトールワゴンの挑戦と歴史

ダイハツ工業が1996年から2002年まで製造・販売していた小型トールワゴン、パイザー。その歴史と特徴、そして販売状況について詳しく見ていきましょう。パイザーは、2代目シャレードソシアルをベースに開発され、1996年8月に発売されました。コンパクトトールワゴンとしては早い時期の登場であり、ダイハツにとって1969年のコンパーノワゴン以来27年ぶりの自社製小型ボンネットワゴンとなりました。

広い室内空間と充実装備

5ナンバーサイズを大きく下回るボディサイズながら、パイザーは広い室内空間を実現していました。そして、当時大衆車では珍しいフルオートエアコン、木目調パネル、本革シートといった充実装備も大きな特徴でした。これらの魅力により、発売当初は一定の販売実績を上げました。

厳しい競争環境と販売低迷

しかし、パイザーの販売はその後低迷していきます。1996年は、マツダ・デミオを始めとする多くの競合車が登場した年であり、パイザーは厳しい競争にさらされました。さらに、「ダイハツ＝軽自動車」という強いイメージも販売を阻む要因となりました。ダイハツのYRVが登場した後も販売は継続されましたが、2002年7月に生産中止、8月に販売終了となりました。総販売台数は4万6,447台でした。

モデルバリエーションとマイナーチェンジ

パイザーは、初代G301G/303G/311G/313G型として1996年から2002年まで販売されました。その間に幾度かのマイナーチェンジが行われています。

1997年9月: マイナーチェンジ。内外装の変更、4WD車のエンジンを1600ccに変更、スポーティグレードの追加など。CMにはアグネス・ラムが出演しました。
1998年7月: マイナーチェンジ。内外装の変更、ベースグレードの変更。欧州ではグランムーヴとして発売開始。
1999年9月: マイナーチェンジ。エアロカスタムの名称変更、CLエアロバージョンの追加など。
2000年9月: 一部改良。車体色の変更。

エンジンとトランスミッション

パイザーに搭載されたエンジンは、1500cc(FF)と1600cc(4WD)のガソリンエンジンの2種類。トランスミッションは、5速フロアMTと4速フロアATの2種類が用意されていました。駆動方式はFFとビスカスLSD付センターデフ式フルタイム4WDの2種類でした。

車名の由来

パイザーという車名は、モンゴル帝国時代のシルクロードの通行許可証である「牌子（Paizah）」を由来とする造語です。海外市場ではGRAN MOVE（グランムーヴ）として販売されました。

後世への影響とリコール

パイザーの販売終了後も、ダイハツはトールワゴン市場への挑戦を継続します。2012年には、エアバッグ制御装置の不具合によるリコールが行われました。また、パイザー以来10年4ヶ月ぶりに発売されたダイハツ・メビウスは、5人乗り本格乗用ワゴンとして注目を集めました。これはコンパーノワゴン以来44年ぶりのステーションワゴンとなりました。

まとめ

パイザーは、時代の変化や競争激化の中で販売を伸ばすことができず、短命に終わったモデルと言えるでしょう。しかし、発売当時の魅力的な装備や個性的な車名、そしてCM戦略など、様々な点で記憶に残る一台です。パイザーの歴史は、ダイハツの小型車開発における一つの試金石として、自動車史に刻まれています。

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