ダイハツ・ミゼットII

ダイハツ・ミゼットII：個性と実用性を兼ね備えた軽貨物自動車

1996年から2001年にかけて、ダイハツ工業は特異な軽貨物自動車「ミゼットII」を製造・販売しました。その愛くるしいデザインと優れた取り回し性能は、多くの人の記憶に刻まれています。本稿では、ミゼットIIの開発背景、デザイン、メカニズム、そしてモデルバリエーションについて詳細に解説します。

開発の経緯とコンセプト

ミゼットIIは、1957年に登場した三輪軽トラック「ミゼット」の名を受け継ぎ、現代のニーズに応えるべく開発されました。初代ミゼットと同様に、狭い路地や小規模な配送に最適化された設計が特徴です。全長2790mm、全幅1335mmというコンパクトなボディは、当時の軽自動車規格を大幅に下回り、抜群の小回りを可能にしています。最小回転半径はわずか3.6mでした。

コスト削減のため、ダイハツの主力軽商用車であるハイゼットと多くの部品を共用。エンジンもハイゼットから流用されましたが、軽量なボディのおかげで、燃費はハイゼットの約半分という驚異的な低燃費を実現しました。また、スペアタイヤはボンネットに搭載、ヘッドライトとフェンダーがボディからはみ出す独特の外観も大きな特徴です。

当初は1人乗りトラックモデルのみでしたが、後に2人乗りモデルやバンタイプの「カーゴ」も追加され、ユーザーの選択肢を広げました。生産はダイハツ池田工場内に新設された「ミゼット工房」で行われ、熟練の職人が手作業で組み立てる、まさに少量生産のプレミアムカーでした。

デザインとメカニズム

ミゼットIIのデザインは、そのコンパクトなボディサイズと相まって、愛嬌のある独特の雰囲気を醸し出しています。特徴的なのは、ボンネットに配置されたスペアタイヤと、ボディからはみ出したヘッドライトとフェンダーです。このデザインは、狭い道での視認性を高める効果も持っていました。

エンジンは、ハイゼットと共通の直列3気筒659ccを搭載。当初はキャブレター仕様でしたが、後に電子制御燃料噴射（EFI）とデジタル点火システム（DLI）を採用したEF-SE型エンジンへと進化しました。また、トランスミッションは、4速MTと3速ATが用意されました。

ブレーキは全車総輪ドラム式、計器類は速度計と燃料計のみというシンプルな構成も、ミゼットIIの特徴の一つです。

モデルバリエーションと進化

ミゼットIIは、発売当初は1人乗りピックアップトラックのみでしたが、その後、バンタイプのカーゴ、2人乗りモデル、そして様々な特別仕様車が登場しました。1997年には、2人乗りモデルにコラムシフトを採用した3速AT車が追加され、使い勝手の向上も図られています。

1999年にはマイナーチェンジを実施。衝突安全基準強化への対応として、スペアタイヤの位置変更、フロントバンパーの延長、衝突吸収構造の採用などを行い、安全性を向上させています。また、エンジンも燃費性能が向上したEF-SE型に変更され、環境性能も進化しました。

生産終了後

ミゼットIIは2001年に生産終了となりました。しかし、その個性的なデザインと高い実用性は、現在でも多くのファンを魅了し続けています。生産終了後、ミゼット工房はコペンの生産工場へと転用されました。

ミゼットIIIとミゼットIV

ミゼットIIと合わせて、東京モーターショーで参考出品されたミゼットIIIとミゼットIV。ミゼットIIIは乗用モデルでトライアングルシートや非対称ドアを採用した革新的なレイアウトでしたが、市販には至りませんでした。ミゼットIVはミゼットIIカーゴをベースにした乗用モデルでしたが、こちらも市販化されませんでした。

まとめ

ミゼットIIは、そのコンパクトなサイズと個性的なデザイン、そして高い実用性によって、多くのユーザーから愛された軽貨物自動車でした。少量生産という希少性も相まって、現在ではコレクターズアイテムとして高い価値を持つ存在となっています。ダイハツの挑戦と技術力の高さを示す、貴重なモデルと言えるでしょう。

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