ダイハツ・リーザスパイダー

ダイハツ・リーザスパイダー：希少な軽オープンカーの軌跡

ダイハツ工業は、かつて軽自動車市場において、個性的なモデルを数多く展開していました。その中でも、特に希少価値が高いのが「リーザスパイダー」です。この車両は、同社の軽乗用車「リーザ」をベースに開発されたオープンカーとして、1991年11月に発売されました。

開発の背景と市販モデル

リーザスパイダーの起源は、1991年開催の東京モーターショーへの参考出品に遡ります。参考出品車は550ccエンジンを搭載した4シーターでしたが、市販化にあたっては、同年施行された軽自動車規格変更に伴い、エンジンは660ccに排気量アップ。また、よりスポーティなモデルとして、2シーターへと変更されました。オープン化によるボディ剛性の低下を防ぐため、ボディ補強が施された結果、ベースモデルと比較して車重は約90kg増加しています。パワートレインはターボエンジンのみの設定でした。

独特の生産工程

リーザスパイダーの生産工程は、他の軽自動車とは大きく異なっていました。ダイハツの軽商用車「ハイゼットデッキバン」と同様の生産手法を採用し、完成したリーザの屋根を熟練工が切り取るという、いわば「手作り感」あふれる製造プロセスでした。そのため、車両は半完成状態のリーザをベースに改造され、新車登録には検査場への持ち込みが必要でした。この特殊な生産方法も、リーザスパイダーの希少性を高める要因となっています。

デザインと仕様

幌は黒一色、幌窓にはビニール素材が溶着されるなど、簡素ながらもスポーティなデザインが特徴です。快適性よりも、軽快な走りを重視した設計がうかがえます。

短い販売期間と生産台数

販売期間はわずか2年足らず。1993年8月に生産が終了しました。総生産台数は380台と非常に少なく、現在ではコレクターアイテムとして高い人気を誇ります。ダイハツの軽オープンカーは、次のモデルである初代コペンが登場するまで、約9年間の空白期間がありました。その空白期間の長さが、リーザスパイダーの稀少性を際立たせています。

モータースポーツへの参加

安全性の問題から、ダイハツチャレンジカップへの参加は認められていませんでした。ロールケージの装着も参加資格の取得には至りませんでした。対照的に、ベース車両であるリーザや、後継モデルであるコペン（6点式ロールケージ装着車）は参加が認められていました。この点も、リーザスパイダーの特殊性を示す一例と言えるでしょう。

まとめ

リーザスパイダーは、その短い販売期間、限定された生産台数、そして独特の製造工程など、多くの点で他の軽自動車とは一線を画す存在でした。現在では入手困難な希少車であり、軽自動車の歴史においても重要な位置を占めるモデルと言えるでしょう。その希少性と個性的な魅力から、多くの愛好家から高い人気を集め続けています。 ダイハツのチャレンジ精神と、職人技が凝縮された一台として、これからもその存在感を示し続けることでしょう。

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