ダイハツ・リーザ

ダイハツ・リーザ：軽自動車市場に風を吹き込んだ個性派クーペ

ダイハツ工業が1986年から1993年まで販売していたリーザは、軽自動車市場において異彩を放ったモデルとして知られています。当時、軽スペシャルティカー市場を席巻していたスズキ・セルボに対抗すべく開発され、「エアロ・ヘミサイクル」というキャッチコピーと共に登場しました。

そのボディスタイルは、3ドアハッチバックのクーペスタイル。躍動感あふれるデザインは、当時の若年層、特に女性層を中心に人気を集めました。ベースとなったのは、ミラ/クオーレのプラットフォームでしたが、全高を80mm低くし、ホイールベースを120mm短縮することで、軽自動車らしからぬスポーティな走りを実現しました。

室内空間は、ドライバーズシートを優先した設計となっています。そのため、後部座席は極端に狭くなっていますが、前席の足元空間は広々と確保され、小型車であるシャレードに匹敵する広さを実現しています。また、軽自動車としては画期的だった全フルトリム内装を採用し、上質な空間を演出しました。

販売当初は、セダン（クーペ）とバン（4ナンバー）の2タイプがラインナップされました。セダンには後席リクライニング機構が備えられ、バンにはターボ仕様が設定されていました。発売当初はバンが主力でしたが、改良を重ねる中でセダンの需要も増加。その後、軽規格の変更を機にセダンタイプに一本化されました。

1989年にはマイナーチェンジを実施。ノンターボ車にはカラードバンパーやサイドストライプが標準装備となり、3速ATが追加されました。また、特別仕様車として「ChaCha」が登場し、女性ユーザー層への訴求を強化しました。ターボモデルでは、エアロパーツやバケットシートなどを装備した「TR-ZZ」が追加され、スポーティさをさらに高めました。

1990年の軽規格変更に伴い、リーザも新規格に対応。エンジンや駆動系は3代目ミラと共通化され、前後バンパー形状も変更されました。これにより全長が約100mm延長されました。また、税制面の変化もあり、軽ボンネットバンのメリットが減少したため、リーザは全車セダンへと変更されました。車種も大幅に整理され、廉価モデルのR、スポーティーグレードのOXY、女性向けモデルのChaChaの3車種のみとなりました。

1991年には、ターボモデルのOXY-Rを追加。ビスカスLSDを標準装備し、よりスポーティな走りを実現しました。同年、オープンモデルであるリーザスパイダーも追加され、バリエーションをさらに拡充しました。

1992年に後継モデルとなるオプティが登場した後も、リーザの生産・販売は続けられましたが、1993年に販売を終了しました。短いながらも個性的なスタイルと走りを持ち合わせたリーザは、軽自動車の歴史において、独自の地位を築いたモデルと言えるでしょう。その車名の由来は、モナリザのように美しく、という意味が込められていると言われています。

リーザは、時代の変化や競合他社の動向に柔軟に対応しながら、独自の個性と魅力を保ち続けたモデルでした。軽自動車に新たな価値観をもたらしたリーザは、現在でも多くのファンから愛され続けています。

もう一度検索