ダイハツ・JB型エンジン

ダイハツJB型エンジン：軽自動車史に名を刻んだ希少な4気筒

ダイハツ工業が1994年から2012年まで生産していた軽自動車用エンジン、JB型。愛称として「森口エンジン」と呼ばれ、多くのファンに親しまれたこのエンジンは、軽自動車の世界において異彩を放つ存在でした。なぜなら、JB型はダイハツの軽自動車用エンジンとして、現在に至るまで唯一の直列4気筒エンジンだったからです。

滑らかな回転と高回転域のパワー

1994年9月、ミラ(L500型系)に搭載されてデビューしたJB型は、水冷直列4気筒DOHC16バルブEFI、659ccというスペックを誇ります。軽自動車用エンジンとしては珍しいタイミングチェーンを採用し、多気筒エンジンならではの滑らかな回転フィール、低振動、そして高回転域での力強いパワー（特にターボ仕様）が大きな特徴でした。特にターボモデルは、その俊敏な加速でドライバーを魅了しました。

しかし、この優れた性能の裏には、トレードオフが存在しました。1気筒あたりの排気量が小さくショートストロークであるため、一般的な軽自動車用直列3気筒エンジンと比較すると、低回転域でのトルクや燃費は劣っていました。そのため、JB型エンジンは、街乗りよりもスポーツ走行に適したエンジンと言えるでしょう。

チューニングベースとしての高い潜在能力

JB型エンジンの潜在能力の高さを示すのが、排気量を拡大した派生型エンジンJC-DETの存在です。ストーリアX4に搭載されたこのエンジンは、JB型をベースに排気量を713ccに拡大したものでした。JB型は純正搭載車種だけでなく、本来搭載されていない車種、例えば軽量なミラのバン仕様などに改造して搭載される例もありました。これは、JB型がチューニングによってさらなる性能を引き出せるポテンシャルを秘めていたことを示しています。

生産終了と3気筒化への流れ

2012年8月31日、初代コペンの生産終了と同時に、JB型エンジンの生産も終了しました。その後、補給用部品の生産も2022年末に終了しており、現在では入手が困難になりつつあります。ダイハツはその後、軽自動車用エンジンを3気筒に一本化することを表明しており（2014年7月時点ではEF-VE型が存在）、JB型に続く4気筒エンジンは登場しないものと思われます。

車種識別とバリエーション

搭載車種を特定する簡単な方法があります。車種を表す3桁の形式番号の1の位が「+2」されているかどうかを確認することで、JB型エンジン搭載車種を見分けることができます（コペンを除く）。例えば、L502、L152などが該当します。

JB型エンジンには、NA仕様のJB-ELや、複数のターボ仕様（JB-JL、JB-DETなど）が存在し、それぞれ搭載車種や出力、トルク特性が異なっています。これらのバリエーションは、それぞれの車種の特性に合わせて最適化されたものでした。

軽自動車エンジンの歴史における足跡

JB型エンジンは、その希少性と独特の特性から、多くのファンを魅了しました。軽自動車用エンジンとして唯一の直列4気筒という事実、そしてその高い潜在能力は、軽自動車の歴史において重要な足跡を残しました。生産終了から年数が経過していますが、その名は多くの愛好家たちの記憶の中に、これからも生き続けることでしょう。

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