ダイハツ・YRV

ダイハツ YRV：個性と走りを両立したコンパクトRV

ダイハツ工業が1998年から2005年にかけて製造・販売していたYRV（ワイアールブイ）は、5ドアのセミトールワゴンタイプの小型乗用車です。ベースとなったのは、1998年に発売されたストーリア。しかし、YRVは単なるストーリアのバリエーションモデルではありませんでした。当時流行しつつあったコンパクトRVというジャンルにおいて、ダイハツは欧州市場への進出も視野に入れ、開発を進めていったのです。

ヨーロッパテイストの走りとパワフルなエンジン

開発においては、デザイン性だけでなく、操縦性についてもヨーロッパでの走行を想定。実際、ヨーロッパでの走行実験を重ね、足回りのセッティングを欧州仕様に仕上げています。心臓部となるエンジンは、初代トヨタ・ヴィッツ用1000ccエンジンをベースに排気量を拡大。1300ccのターボエンジン「K3-VET」と、自然吸気エンジンの「K3-VE」の2種類がラインナップされました。

特にK3-VETは、発売当時世界最強の1300ccエンジンと謳われ、その動力性能は驚異的でした。パワーウェイトレシオは6.7kg/PSと、スポーツカー並みの優れた加速性能を誇り、2013年現在においても同クラスのエンジンではこれを超えるものは存在しません。ストーリアやテリオス、アトレー7にも搭載されたこれらのエンジンは、ダイハツの主力エンジンとして活躍しました。

個性的なスタイリングと充実の装備

YRVのスタイリングは、特徴的なサイドウインドウ形状が目を引きます。これは「ダブルウェッジスタイル」と呼ばれ、スポーティな印象を与えていました。インテリアは、幾何学模様のダッシュボードや、斬新なインパネシフトを採用。パノラマガラスルーフ車を除き、全高を抑えることで機械式駐車場への入庫も可能としています。また、開発当初はトヨタ自動車へのOEM供給も計画されていたため、リアにもダイハツのエンブレムが、トヨタのエンブレムと同じサイズの楕円形で配置されていました。この点は当時のダイハツ車としては珍しい試みでした。自動車雑誌では、YRVをトヨタのスターレット復活と予測する記事も掲載されました。

販売とモデルチェンジ

2000年8月30日、YRVは「走れ！快感。」というキャッチコピーとともに発売されました。CMキャラクターには郷ひろみを起用するなど、話題を集めました。当初のグレードは1.0Lと1.3L、NAとターボが設定され、トランスミッションは4ATと5MTが用意されました。NA車はコラムシフト、ターボ車はフロアシフトと、グレードによって異なるレイアウトが採用されました。

発売後も、2001年、2002年、2004年とマイナーチェンジを実施。グレード体系の見直しや、環境性能の向上などが図られました。特別仕様車も数種類発売され、ユーザーのニーズに対応したモデル展開がされていました。2005年8月に生産終了、9月に販売終了となりました。ダイハツの小型車としては、OEM供給や姉妹車を持たない最後のモデルとなりました。

車名由来

YRVという車名は、「Youthful style（若々しく）」、「Robust body（たくましく）」、「Vivid performance（イキイキと）」の頭文字をとったものです。このネーミングからも、ダイハツがYRVに込めた意気込みが伝わってきます。

まとめ

YRVは、スポーティなデザインとパワフルなエンジン、そして欧州市場を意識した開発など、多くの魅力を兼ね備えた一台でした。ダイハツの技術力の高さを示すモデルであり、独自の個性と走りの楽しさを両立したコンパクトRVとして、現在でも多くのファンを魅了し続けています。その存在は、日本の自動車史において重要な位置を占めていると言えるでしょう。

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