ダイムラー・ベンツ DB 605

DB 605 エンジンの概要

DB 605は、第二次世界大戦中にドイツのダイムラー・ベンツ社（現ダイムラー）によって開発された航空機用液冷倒立V型12気筒レシプロエンジンです。このエンジンは、同社の先代モデルDB 601を基に改良されたもので、1942年から1945年の間、メッサーシュミットBf 109やBf 110などの軍用機に広く搭載されました。また、DB 605を二基使用する派生型のDB 610は、He 177に装備され、高出力を実現しました。

特徴

DB 605の最も顕著な改良点は、シリンダーの排気量にあります。DB 601のシリンダー内径は150 mmでしたが、DB 605では154 mmに拡張されました。この変化によって、総排気量は33.9Lから35.7Lに増加し、エンジンの性能が向上しました。これにより、最大回転数もDB 605で2,800 rpmに達し、出力は1,332 hpから1,455 hpに増大しました。

このエンジンは、二重のボッシュ製マグネトーを使用した点火システムを採用し、各シリンダーに2本の点火プラグが配置されています。また、燃料噴射システムは気筒内直接噴射式で、90バールの圧力に対応しています。潤滑はドライサンプ方式で行われ、35Lのオイルタンクを備え、効率的なオイル循環が実現されています。過給機には、スーパーチャージャーが使用されており、飛行高度に応じた最適な過給が実現されています。

当初、DB 605はオクタン価87の燃料を使用するよう設計されていましたが、1944年までにオクタン価100の燃料にも対応し、MW 50やGM-1といったブースト装置も搭載可能となりました。大戦後半には、燃料事情が厳しくなり、これらのブーストシステムが活用されていました。

量産型

DB 605にはいくつかの量産型が存在します。

• - DB 605 A(M): 戦闘機に搭載された標準モデル。離昇出力1455hp、MW 50ブースト時には1775hp。
• - DB 605 B(M): ギアボックスの減速比を変更した型で、主にBf 110やMe 210に搭載。
• - DB 605 AS(M): 高高度性能を向上させた型で、最大出力は1415hp（MW 50不使用時）と1775hp（使用時）。
• - DB 605 ASB(M): オクタン価87燃料用に改良された型。
• - DB 605 ASC(M): オクタン価100燃料用に改良された型で、出力は1970hpに達します。
• - DB 605 DM: Dシリーズの初期型で1675hp出力するモデル。
• - DB 605 DB/DC: それぞれオクタン価を87または100に対応させた改修型です。

DB 610

DB 605を二基使用する特別仕様のDB 610は、He 177のエンジンとして設計され、最大出力2910hpを実現しました。

結論

DB 605は、特にドイツの航空機において重要な役割を果たしたエンジンであり、性能の高い設計が後の航空機エンジンに大きな影響を与えました。その技術は、航空性能を向上させるための基盤を提供するものであり、エンジン設計の歴史においても重要な位置を占めています。

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