ダイヤモンドジュビリー (競走馬)

ダイヤモンドジュビリー：気性と才能の狭間で生きた伝説の名馬

1900年、イギリス競馬界に彗星のごとく現れた競走馬、ダイヤモンドジュビリー。その名は、ヴィクトリア女王のダイヤモンドジュビリー（在位60周年記念）に由来しています。彼は、後のエドワード7世であるアルバート・エドワード皇太子によって所有され、数々の名馬を輩出した名牝パーディタを母に持ちました。兄弟には、同じく名馬として知られるパーシモンやフロリゼルもいます。

しかし、ダイヤモンドジュビリーの最も有名な特徴は、その類まれな凶暴性でした。父セントサイモン譲りの気性難は、想像をはるかに超えるものでした。馬丁の指を噛み切るなど、日常的に危険と隣り合わせの生活を送っていたと言われています。そのため、まともに扱える人間はほとんどおらず、激しい気性からレース中に騎手を振り落とすこともしばしば。2歳時は6戦して1勝という結果に終わっています。

去勢手術が検討されましたが、停留精巣のため当時の獣医学では不可能でした。多くの騎手が彼を乗りこなすことを諦め、最終的に担当厩務員であるハーバート・ジョーンズが騎乗することになります。ジョーンズはその後も騎手として活躍しましたが、1913年のエプソムダービーでは、トラックに飛び出したエミリー・デイヴィソンと衝突事故に巻き込まれるなど、波乱に満ちた人生を送りました。

ダイヤモンドジュビリーの凶暴さは、引退後も全く改善されませんでした。体調不良の際、薬を飲ませるのも一苦労。棒に薬を塗り、噛みつかせるという荒業を強いられました。また、馬房に迷い込んだ浮浪者の腕を食いちぎろうとしたり、脱走して町に逃げ込んだ際には、行く手を阻もうとした男子生徒たちに突撃するなど、数々の逸話が伝えられています。

これほどの凶暴性を持ちながら、ダイヤモンドジュビリーは並外れた才能の持ち主でした。2000ギニー、エプソムダービー、セントレジャーステークスというイギリスクラシック三冠を制覇しただけでなく、ニューマーケットステークスやエクリプスステークスでも勝利を収めています。ダービーでは、兄パーシモンの記録に並ぶタイムを叩き出しました。セントレジャーステークスでは、レース開始20分前から暴れ続けたにもかかわらず、見事勝利を掴みました。彼の能力は、その気性の荒さを差し引いても、まさに一流レベルだったと言えるでしょう。

種牡馬としてもダイヤモンドジュビリーは成功を収めます。1902年からサンドリンガム王立牧場で供用された後、1906年にはアルゼンチンへと渡りました。イギリスでは、セントサイモン系種牡馬が既に多く存在していたため、大きな成功とはなりませんでしたが、アルゼンチンでは大成功を収めます。1914年から1916年、そして1921年の4回も種牡馬ランキングで首位を獲得しました。Sancy、As de Espadas、Smasher、Moloch、Last Reason、Campanazo、Mustafa、Ricaurteなど、数々の優秀な産駒を輩出し、南米競馬界に大きな足跡を残しました。

ダイヤモンドジュビリーは、その凶暴な性格ゆえに多くの困難に直面しながらも、類まれな才能で競馬史に名を刻みました。彼は、気性と才能という相反する要素を併せ持つ、まさに伝説的な競走馬だったと言えるでしょう。その生涯は、競馬という世界における、人間と動物、そして才能と困難の複雑な関係を象徴する物語となっています。

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