ダウラト・ベグ・オルディ

ダウラト・ベグ・オルディ（Daulat Beg Oldi, DBO）は、インドのラダック連邦直轄地にある、かつてのキャラバン隊の野営地であり、現在は軍事基地として利用されている場所です。ラダックとタリム盆地を結ぶ古代の交易路沿いに位置し、その歴史的な重要性と戦略的な価値を兼ね備えています。

地理と利用

ダウラト・ベグ・オルディは、カラコルム山脈の東端近く、インドの最北部に位置しています。中国との国境からは南に約8キロメートル、アクサイチンの実効支配線からは北西に約9キロメートルという、国境に非常に近い場所にあります。シアチェン氷河の軍事基地を除けば、インド最北端の有人居住地であり、周辺地域は非常に過酷な環境です。南に位置する最も近い町マーゴには、少数のバルティ人が居住しており、主に杏の栽培やヤクの飼育で生計を立てています。

2001年、インド政府はラダックの中心都市レーからダウラト・ベグ・オルディまでの自動車道路建設を発表しました。この計画は、この地域へのアクセスを改善し、軍事的な補給路を確立することを目的としています。冬には気温が-55℃まで下がる極寒の地であり、天候も頻繁に悪化し、強い氷のような風が吹き荒れます。植物や野生生物はほとんど見られず、通信はインマルサット（衛星電話）を介してのみ可能という、非常に厳しい環境です。

語源

ダウラト・ベグ・オルディという名前は、チャガタイ語で「偉大で裕福な男が死んだ場所」を意味します。この名前の由来には諸説あり、大規模なキャラバンが襲撃された場所であるという説や、裕福な男がその財宝と共に埋葬された場所であるという説があります。イギリスの植民地時代の外科医ヘンリー・ウォルター・ベリューは、ダウラト・ベグ・オルディが「州の領主がここで死んだ」という意味であり、16世紀初頭のヤルカンド・ハン国のスルタン、サイード・ハンがこの地で亡くなったと述べています。サイード・ハンはラダックへの軍事遠征からの帰路にこの地で命を落としたとされており、その遠征の記録は、サイード・ハンの従兄弟であったミールザー・ハイダル・ドゥグラトが著した『ターリーヒ・ラシーディー』にも記載されています。

歴史

歴史的に、ダウラト・ベグ・オルディは、カラコルム峠を経由するレーとタリム盆地を結ぶ交易路におけるキャラバンの野営地として利用されていました。しかし、恒久的な居住地として利用された形跡はありません。1962年の中印国境紛争後、この地域の国境は封鎖され、長らく閉鎖された状態が続きました。2013年4月には、中国人民解放軍の小規模部隊がダウラト・ベグ・オルディの南東30キロメートルの地点に陣営を設営し、緊張が高まりました。インド側は当初、中国軍の陣営が実効支配線から10キロメートル侵入していると主張し、後に19キロメートルに修正しました。また、この事件中に中国軍のヘリコプターがインド領空を侵犯したとも主張しています。この事件は両国間の関係を緊張させましたが、5月初旬には両軍が部隊を後退させることで合意しました。

前線着陸場

ダウラト・ベグ・オルディには、インド陸軍が維持するヘリポートと砂利滑走路があります。この滑走路は標高5,065メートルに位置し、世界最高所の滑走路として知られています。この基地は、近くに駐留する軍隊に補給物資を供給するために利用されており、定期的な航空機による運航が行われています。1962年中印国境紛争中に開設されたこの基地には、C.K.S.ラジェ中隊長が最初に航空機を着陸させ、当時の世界最高地点での航空機着陸記録となりました。当初はアメリカ製のC-82輸送機が使用されていましたが、1966年の地震で地盤が緩み、固定翼機の運用が困難になったため、一時閉鎖されました。その後、滑走路の再整備が行われ、2008年5月31日にインド空軍のAn-32輸送機が再び着陸し、運用が再開されました。インド空軍は1962年から1965年まで輸送機を離着陸させており、43年の間をおいて運用を再開しました。2013年4月20日には、運用能力の実証として、インド空軍はダウラト・ベグ・オルディにC-130J輸送機を着陸させました。これは、2013年のダウラト・ベグ・オルディ事件の直後に行われ、この高度での中距離航空機着陸の世界記録を更新する可能性を示しました。

中印国境会見場

ダウラト・ベグ・オルディは、インド陸軍と中国人民解放軍の定期的な協議のための、両軍が公式に合意した5つの国境職員会見場の1つです。この会見場は、両国間の緊張緩和に重要な役割を果たしており、紛争解決や平和維持の場として機能しています。

関連項目

フクチェ（フクチェ前線着陸場）
シアチェン氷河
デプサン高原
トイシ

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