ダカール沖海戦

ダカール沖海戦：自由フランスの挫折とヴィシー政権の抵抗

1940年9月下旬、第二次世界大戦の激戦の舞台は、アフリカ大陸西海岸のダカール（現在のセネガル）沖へと移りました。連合国軍を主力とするイギリス海軍と、フランスのヴィシー政権に属するフランス海軍が激突したダカール沖海戦、その背景には複雑な国際情勢と、フランス自身の分裂がありました。

戦争の渦中：フランスの降伏と分裂

1940年5月、ドイツによる電撃戦はフランスを席巻し、フランスは降伏。シャルル・ド・ゴール将軍はイギリスへ亡命し、自由フランス政府を樹立、ヴィシー政権との対立構造が形成されました。ヴィシー政権は中立を宣言していましたが、その実態はドイツ寄りの姿勢を示していました。

連合国であるイギリスは、ドイツがフランス海軍の戦力を接収することを阻止するため、フランス艦隊の掌握に躍起になっていました。メルセルケビール海戦では、イギリス海軍がフランス艦隊を攻撃し、大きな被害を与えたものの、フランスの反英感情は高まり、ヴィシー政権はイギリスとの国交を断絶しました。

ド・ゴール将軍のダカール攻略作戦

ド・ゴール将軍は、フランス領アフリカの掌握を企図。その最初の目標がダカールでした。ダカールには、新鋭戦艦リシュリューを始めとするフランス海軍の戦力が残っており、ドイツがUボート基地として利用することを懸念したイギリスも、ド・ゴールの作戦に協力することにしました。作戦は、まず交渉による和平的解決を図り、それが失敗すれば武力制圧という二段構えでした。

作戦発動と戦闘開始

自由フランス軍の上陸部隊は、イギリス海軍の支援を受けてダカールを目指しました。イギリス艦隊は戦艦、空母、巡洋艦など、強力な戦力を擁していました。しかし、ダカールのヴィシーフランス軍は、沿岸砲台や戦艦リシュリューを配備し、徹底抗戦の構えを見せていました。

戦闘は、イギリス艦隊による艦砲射撃と空襲から始まりました。ヴィシーフランス軍も猛反撃し、両軍は激しい砲撃戦を繰り広げました。さらに、ヴィシー側の潜水艦がイギリス艦隊への攻撃を試みましたが、イギリス側の対潜水艦戦術により撃沈されるなど、海戦は膠着状態となりました。

特に、9月25日には、ヴィシーフランス軍の潜水艦が英戦艦レゾリューションに魚雷を命中させ、大破させるという戦果を挙げました。しかし、イギリス側は、戦闘の長期化と、ヴィシーフランスとの全面戦争回避の観点から、上陸作戦の中止を決定しました。

作戦の失敗とその後

ダカール沖海戦は、連合国軍の撤退という結果に終わりました。ド・ゴール将軍の作戦は失敗し、ヴィシー政権の反英感情はさらに強まりました。イギリスにとっても、フランスの植民地掌握という戦略目標の達成には至りませんでした。

しかし、この海戦は、フランス海軍の戦力配置、そして自由フランスとヴィシー政権というフランス国内の分裂という、戦況に多大な影響を与えました。2年後の北アフリカ上陸作戦（トーチ作戦）では、ヴィシー政権は比較的容易に連合国軍と講和し、リシュリューをはじめとするダカール在泊の艦艇は自由フランス海軍に合流することとなります。ダカール沖海戦は、第二次世界大戦におけるフランスの複雑な立場と、連合国軍の戦略上の困難さを象徴する出来事でした。

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